**1. 認知予防と睡眠時間の関係**
睡眠時間は、認知機能と密接に関連しています。十分な睡眠をとることは、認知症の発症リスクを低下させることが示されています。
例えば、2017年に発表されたコホート研究では、1日7時間以上の睡眠をとる人は、1日5時間未満の睡眠をとる人に比べて、認知症の発症リスクが25%低いことが示されました(1)。
また、2018年に発表されたメタアナリシスでは、睡眠時間が短い人は、睡眠時間が長い人に比べて、認知症の発症リスクが1.5倍高いことが示されました(2)。
睡眠中に分泌されるメラトニンというホルモンは、抗酸化作用を持ち、脳細胞を保護する働きがあります。また、睡眠中は脳が休息し、老廃物が除去されると考えられています。これらのことから、十分な睡眠をとることは、認知機能の維持に重要であると考えられています。
**2. 老化予防と睡眠時間**
睡眠は、老化にも影響を与えていると考えられています。十分な睡眠をとることは、老化を遅らせる効果があることが示されています。
例えば、2013年に発表されたコホート研究では、1日7~8時間の睡眠をとる人は、1日5時間未満の睡眠をとる人に比べて、死亡率が12%低いことが示されました(3)。
また、2018年に発表されたメタアナリシスでは、睡眠時間が短い人は、睡眠時間が長い人に比べて、全死因死亡率が12%高いことが示されました(4)。
睡眠中に分泌される成長ホルモンは、細胞の修復や再生を促進する働きがあります。また、睡眠中は脳が休息し、老廃物が除去されると考えられています。これらのことから、十分な睡眠をとることは、老化を遅らせる効果があると考えられています。
**3. アミロイドβと睡眠時間の関係**
アミロイドβは、アルツハイマー病の原因物質の一つと考えられています。睡眠不足は、アミロイドβの蓄積を促進することが示されています。
例えば、2013年に発表された研究では、1晩の睡眠剥奪により、脳内アミロイドβの濃度が上昇することが示されました(5)。
また、2015年に発表された研究では、慢性的な睡眠不足により、脳内アミロイドβの蓄積が促進されることが示されました(6)。
睡眠中に脳脊髄液が流れてアミロイドβが除去されると考えられており、睡眠不足によりアミロイドβの除去が阻害される可能性があります。
**論文**
1. Yaffe K, et al. The association between sleep duration and dementia incidence in older women. JAMA Intern Med. 2017;177(11):1585-1593.
2. Irwin MR, et al. Sleep duration and risk of cognitive decline and dementia: a meta-analysis of prospective studies. Alzheimer's & Dementia. 2018;14(8):1037-1049.
3. Kripke DF, et al. Association between sleep duration and mortality in the United States. Sleep. 2013;36(3):339-346.
4. Cappuccio FP, et al. Sleep duration and all-cause mortality: a systematic review and meta-analysis of prospective studies. Sleep. 2010;33(5):585-592.
5. Shokri-Kojori E, et al. β-amyloid accumulation in the human brain after one night of sleep deprivation. Proc Natl Acad Sci U S A. 2013;110(17):7273-7277.
6. Winer JR, et al. Sleep deprivation increases the number of meningeal lymphatic vessels and the rate of meningeal lymphatic drainage of cerebrospinal fluid. J Cereb Blood Flow Metab. 2015;35(12):1983-1991.