クロスオーバーステップにおける足圧中心動揺の特性と、その制御に関与する足関節周囲筋群の筋活動との関係は、バランス制御や運動機能において非常に重要な要素です。
まず、クロスオーバーステップ中の足圧中心(COP)の動揺特性について説明します。研究によると、片脚立位期と着地期におけるCOPの動揺量や動揺速度は異なります。
具体的には、着地期ではCOPの動揺量(COP-RMS)や動揺速度(COP-V)が片脚立位期に比べて有意に大きくなることが示されています12。これは、着地時に身体が新たな支持基底面を形成するため、より大きな動揺が必要となるからです。
次に、足圧中心の動揺と足関節周囲筋群の筋活動との関係について説明します。クロスオーバーステップ中の足関節周囲筋、特に前脛骨筋(TA)、ヒラメ筋(SOL)、長腓骨筋(PL)、母趾外転筋(AH)の活動がCOPの動揺速度を制御することが示されています123。
具体的には:
- 左右方向のCOP-Vは長腓骨筋の活動と関連しています。
- 前後方向のCOP-Vはヒラメ筋の活動と関連しています。
- 片脚立位期では長腓骨筋がCOPの左右方向の動揺速度を調整します。
- 着地期ではヒラメ筋が前後方向の動揺速度を制御します。
これらの筋肉の協調的な活動が、クロスオーバーステップ中のバランス維持に重要な役割を果たしています67。
さらに、高齢者におけるクロスオーバーステップの特性も考慮する必要があります。高齢者は側方への不安定性が増す傾向があり、このことが転倒リスクを高める要因となります。したがって、若年者と比較して高齢者ではCOPの動揺特性や筋活動パターンが異なる可能性があります12。
最新の研究(2024年)では、クロスオーバーステップのバイオメカニクスについてさらに詳細な知見が得られています。この動作では、支持する側の股関節が内転・内旋しながら伸展し、骨盤が同側へ回旋します。また、支持する足の下腿が前下方に傾斜し、足関節の背屈と外がえしが生じます17。これらの動きに伴い、股関節外転筋、外側広筋、大腿二頭筋などが活発に働きます。
総じて、クロスオーバーステップ時の足圧中心動揺特性とそれを制御する足関節周囲筋群の活動は、バランス制御や転倒予防において重要な指標です。この理解は、リハビリテーションや運動プログラムの設計、特に高齢者や運動機能障害を持つ人々への適切な介入を行うために不可欠です。また、スポーツパフォーマンスの向上や怪我の予防にも応用できる重要な知見となっています。