嚥下過程と胸鎖乳突筋

 

胸鎖乳突筋は、嚥下時に重要な役割を果たします。

 

この筋肉は首の側面を斜めに通り、頭部の動きを支援すると同時に、嚥下過程においても機能します。具体的には、胸鎖乳突筋は首を左右に回旋させる働きを持ち、屈曲、側屈といった頚部の動きにも関与します。

 

嚥下時には、舌骨を上方に引き上げることで、食道への食物の通過を助ける役割を担います。

 

また、胸鎖乳突筋は呼吸にも関与しており、特に吸気時に胸郭を拡張する補助的な役割を果たします。これは、胸鎖乳突筋が収縮することで、胸骨と鎖骨を持ち上げ、肺への空気の流入を助けるためです。

 

嚥下時には、この筋肉が適切に機能することで、食道と気管の間の適切な調整を促し、食物が正しい経路を通るようにします。

 

 

胸鎖乳突筋について

胸鎖乳突筋は、首の筋肉の一つで、舌骨を引き上げる役割を果たしています。

具体的には、舌骨上筋群の一部として、嚥下時に舌骨を上方に牽引し、食塊が咽頭から食道へと移動するのを助けます。この筋肉は、舌骨を安定させたり、首や頭の動きを支えたりする重要な役割も担っています

 

舌骨上筋群には他にも顎二腹筋(前腹・後腹)、顎舌骨筋、オトガイ舌骨筋、茎突舌骨筋があり、これらの筋肉が協力して舌骨の位置を調節します。舌骨上筋群は開口運動にも関与しており、舌骨下筋群により舌骨が固定された場合には下顎を下制する作用があります。また、舌骨下筋群の一つである甲状舌骨筋は、舌骨と甲状軟骨を連結しており、嚥下時には舌骨の前上方移動に追従するように喉頭を挙上します。

 

舌骨上筋群の筋力を強化するための訓練方法としては、舌圧測定器を用いた舌挙上訓練があります。これは、舌圧と舌骨上筋群の筋活動の関連性を利用したもので、健常若年者では65%、健常高齢者では50%の強度で舌圧発揮を行うと、頭部挙上時の舌骨上筋群の筋活動と同程度の筋活動が得られるとされています。

 

このように、胸鎖乳突筋を含む舌骨上筋群は、嚥下機能の正常な運動を支えるために非常に重要な役割を果たしています。舌骨の適切な位置と動きは、食べ物を安全に飲み込むために必要不可欠です。

 

 

寝たきりの人や摂食嚥下機能に問題を抱える人にとって、胸鎖乳突筋のストレッチや強化は、嚥下機能の維持や向上に役立つとされています。

 

適切な嚥下体操やストレッチは、この筋肉の機能を促進し、嚥下困難を軽減するのに有効です