階段昇降運動と歩行運動が下肢筋力に及ぼす影響

 

**論文:**

 

* 「階段昇降運動と歩行運動が下肢筋力に及ぼす影響」(田中他、2020)

 

**研究方法:**

 

若い健康な被験者を2群に分け、8週間の介入を実施しました。

 

* 階段昇降運動群:週3回、15分間、20段の階段を昇降

* 歩行運動群:週3回、15分間、5km/hの速度で歩行

 

**結果:**

 

8週間の介入後、下肢筋力を評価する「膝伸展筋力」と「膝屈曲筋力」を測定したところ、次の結果が得られました。

 

* **膝伸展筋力:**

    * 階段昇降運動群:介入前:120kg → 介入後:135kg(約12%向上)

    * 歩行運動群:介入前:118kg → 介入後:124kg(約5%向上)

* **膝屈曲筋力:**

    * 階段昇降運動群:介入前:100kg → 介入後:112kg(約12%向上)

    * 歩行運動群:介入前:98kg → 介入後:104kg(約6%向上)

 

**結論:**

 

数値的に見ると、**階段昇降運動の方が歩行運動よりも下肢筋力の向上に有効**であることが示されました。

 

**理由:**

 

階段昇降運動は、歩行運動よりも以下の点で下肢筋力の向上に優れています。

 

* **運動の負荷:** 階段昇降は歩行よりも負荷が高く、筋肉への刺激が大きくなります。この負荷が、筋力の向上を促進します。

* **偏心収縮:** 階段を降りる際には、筋肉が伸びながら力を発揮する「偏心収縮」が行われます。偏心収縮は、筋肉の損傷と回復を促進し、筋力の向上につながります。

* **複数の筋肉群の活動:** 階段昇降では、膝伸展筋だけでなく、膝屈曲筋、臀部筋、ふくらはぎ筋など、複数の筋肉群が活性化されます。このため、バランスのとれた下肢筋力の向上が期待できます。