高齢者の歩行機能と脳活動の関連性に着目

 

要点

皮質運動相関は高齢者間で有意に異なり、若年者は快適歩行と速歩時に強い相関を示し、認知的二重課題歩行では弱い相関を示した。

 

 

目的

歩行は筋骨格系だけでなく、認知を含む高次脳機能も関与する複雑な行動である。本研究は、65~74歳の若年者と75~84歳の老年者の2群について、トレッドミル歩行時の下肢筋活動と皮質活性化の相関を検討するために行われた。

 

方法

若年者31名と高齢者31名が本研究に参加した。参加者は全員、トレッドミル上で3つの歩行条件((1)快適歩行、(2)速歩、(3)認知的二重課題歩行)を順次行った。トレッドミル歩行中、表面筋電図システムを用いて下肢筋活動を測定し、機能的近赤外分光システムを用いて皮質の活性化を測定した。トレッドミル歩行中の筋活動と皮質活性化の相関を解析し、2群間で比較した。

 

結果

快適歩行中、下肢筋活動は皮質活性化と強い相関があり、特に遊脚期において相関が強かった。早歩きでは、下肢筋活動と皮質活性化との相関は、両群とも快適歩行時よりも強かった。認知的二重課題歩行では、前頭葉領域と運動野の皮質活性化が増加したが、筋活動と皮質活性化の相関は両群とも快適歩行時よりも弱かった。

 

結論

大脳皮質と運動野の相関は、老年者と若年者で有意に異なっていた。これらの結果は、高齢者では歩行時の脳活動だけでなく、皮質運動相関を調節することで歩行機能が補償されていることを示唆している。これらの結果は、高齢者の歩行訓練や転倒予防プログラムを開発するための基礎となる可能性がある。