歩行速度と免疫機能の関連性

 

高齢者の身体組成、筋収縮力、免疫細胞に対する異なる速度での歩行トレーニングの効果。単盲検無作為化比較試験

📕Park, Sihwa, Sang-Kyun Park, and Yong-Seok Jee. "Effects of walking training at different speeds on body composition, muscle contractility, and immunocytes in the elderly: A single-blinded randomized controlled trial." Archives of Gerontology and Geriatrics 106 (2023): 104871. https://doi.org/10.1016/j.archger.2022.104871
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🔑 Key points
🔹歩行速度を一定に保つと、健康な体組成を維持するだけでなく、筋収縮力にポジティブな変化をもたらし、サルコペニアを遅らせる役割を果たすことができる。
🔹ウォーキングは、筋収縮力の改善により、高齢者の免疫細胞機能を改善することができる。
🔹本研究では、適度な速度のウォーキングが、高齢者の健康な体組成と筋収縮力を維持し、免疫細胞をポジティブに変化させることを明らかにした。

[背景・目的] 本研究では、3種類のウォーキングを用いて、高齢者の体組成、筋収縮力、免疫細胞の変化について検討した。

[方法] 76名の参加者を対照群(control group, CON)、ゆっくり歩行群(slow walking group, SWG)、適度な歩行群(moderate walking group, MWG)、速歩群(fast walking group, FWG)に無作為に割り付けた。

✅ 介入内容の詳細
・ウォーキングプログラム参加前に、SWG、MWG、FWGの参加者全員が5分間のウォームアップ運動を行い、プログラム終了時にマットレスの上で5分間のクールダウン運動を行った
トレッドミルウォーキングプログラムは、1日30分、週5日、12週間実施
・最初の1週間は、トレッドミルのベルトスピードに適応させるため、3群の参加者に30分間快適に歩いてもらった
・その後の歩行練習は、SWG:予測最大心拍数(220-年齢)の55~60%、MWG:61~70%、HWG:71~85%に相当する心拍数で歩行速度が調整された

[結果] 筋肉量はCONで減少した(-2.55 ± 3.63%; P < 0.05)のに対し、FWGでは増加した(1.92 ± 4.46%; P < 0.05)。脂肪量はCONでは増加したが、MWGとFWGでは減少した(-18.71 ± 14.22%; P < 0.001)。大腿二頭筋のTc(収縮時間)はCONで減少し、SWGでは減少傾向がみられた。BFのTcはMWGでは増加したが,FWGでは顕著に増加した(21.19 ± 24.53%; P < 0.05).大腿直筋でも同様の傾向がみられた.

■ 歩行速度と免疫機能の関連性を示す結果
・白血球はCONでは変化がなかったが、MWGとFWGで増加傾向を示した。
・好中球はCONで減少したが、他の群では増加傾向を示した。
・リンパ球(10.25 ± 19.48%; P < 0.01)とヘルパーT細胞(14.32 ± 17.99%; P < 0.05)はFWGで増加した
・NK細胞はSWGで改善したがMWG (38.45 ± 96.96%; P < 0.05) とFWG (52.69 ± 58.37%; P < 0.05) で明らかに増加した。

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[結論] 本研究では、高齢者の速歩は筋収縮力を向上させ、12週間後の筋肉量の増加または維持、脂肪量の減少により免疫細胞の機能向上も期待できると結論づけた。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

いまほど、『免疫機能』が脚光を浴びたことはないだろう。
この数年の時流が、この光をつくり出した。
よく職場で「ぼくは高強度の運動を1日80分間(自転車通勤)、週5回程度していますので、感染しません」と、去勢を張っている。
だが、全くのデタラメを述べている訳ではなくて、きちんとエビデンスに基づいた発言だ。
最近の文献抄読において、高活動群は、入院のリスク比が2.8倍減少することを学んだ。

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🌱 note.

運動は、免疫機能を高める。