硬くなった、または短縮した筋に痛みが出るメカニズム

 

硬くなった、あるいは短縮した 筋による痛み 

 

短くなった範囲でしか活動できない筋は、 常にその方向への動きが優位になってい ることを意味します。

 

常に同じ筋に持続的 な過負荷が加わっていると、ミオシンフィラ メントとアクチンフィラメントの結合が解除 できなくなることにもつながります。そのメ カニズムは次の通りです(下図参照)。

 

①骨格筋への過負荷や過剰疲労が続くと、 運動神経末端から神経伝達物質である アセチルコリンが過剰分泌されます。

 

②終板 (運動神経が筋肉に到達する部位 の筋線維側の特殊な構造体)に、強くて持続的な脱分極(筋線維の収縮をも たらす細胞膜電位の減少)が起きます。

 

③筋小胞体から Ca²+(カルシウムイオン) が大量かつ持続的に放出され、筋線維 の持続的収縮が起きます。

 

④この収縮によって代謝が高まり、筋の エネルギー要求量も増加しますが、筋 の等尺性収縮によって筋内部の血管は 圧縮されているので、酸素分圧が低下 し、筋のエネルギー供給源となるリン 酸結合をもたらす ATP、アデノシンニ リン酸、クレアチンリン酸は欠乏する ことになります。

 

⑤その結果、筋はエネルギー危機に陥り、 過敏性物質(內因性発痛物質)が筋細胞外に放出され、IV群神経終末や自律 神経終末を刺激して痛みを引き起こし ます。

 

さらに、筋からの痛覚線維のインパルス が交感神経の反射活動を高めて局所的な 虚血をもたらします。僧帽筋の短縮が持 続し、血液が行き渡らない状態になる肩 こりの症状などがこれに当たります。また、 こうかんしんけいせつこせんい 筋内の局所に交感神経節後線維から反射 活動によって放出されるノルアドレナリン つうかくじゅようき が、痛覚受容器の過敏化にも寄与します。

 

結果として、ミオシンフィラメントをアク チンフィラメントから引き離すATPが欠乏 し、両者の連結が切れないまま、筋は収縮 を維持することにつながるのです。