有酸素運動が血管を若返らせ、腎機能を改善に導く

 

有酸素運動が血管を若返らせ、腎機能を改善に導く

 

 近年、腎機能の低下を抑えるには、適切な運動が必要である、という研究結果が世界中で蓄積された結果、運動療法を主軸とする「腎臓リハビリテーション」が、高齢の透析患者の多いわが国で、世界に先駆けて保険適用となっています。

 

 そこで、慢性腎臓病改善のための運動療法について研究を行ってきた東北大学名誉教授・山形県立保健医療大学理事長の上月正博氏に、運動が腎機能の改善につながるメカニズムと、どんな運動を行えばいいのかについてお聞きしました。

 

 上月氏によると、腎機能の改善が期待できるのは、自転車こぎやウォーキングなどの「有酸素運動」です。

 

 なぜ有酸素運動が良いのか。有酸素運動が腎機能を改善するメカニズムについて、上月氏は、「ウォーキングなどの有酸素運動によって酸素を取り込み、血流が促されることで血管が若返り、腎臓への負担が減るのだと推測しています」と話します。

 

 その詳細をまとめると、以下のようになります。

有酸素運動をすると……〉 ・血管壁が刺激され、内皮細胞で一酸化窒素(NO)がつくられる

 一酸化窒素(NO:エヌオー)は、血流の増加によって血管内皮細胞から放出される血管拡張物質。ウォーキングなどの有酸素運動をするとふくらはぎの筋肉のポンプ作用により全身の血流が促され、腎臓の毛細血管にも酸素や栄養が行き渡ります。「このとき、血流の増加によって血管壁の内皮細胞でNOが多くつくられ、それが血管の中膜にある平滑筋の緊張をゆるめて血管をしなやかな状態にします」(上月氏

 

・NOが増えることで血管が広がり、腎臓の負担が減る

 NOが増えると全身の血管が広がり、血圧が低下し、動脈硬化も改善されます。腎臓には全身の血液の20%が流れ込んでいるため、血管が広がることが腎臓にも良い影響をもたらします。

 

「腎臓で老廃物のろ過を行っている糸球体は毛細血管の塊ですが、特に糸球体の出口の血管(輸出細動脈)が広がります。すると糸球体にかかる圧力が下がり、腎臓の負担が減ることが考えられます」(上月氏

 

 有酸素運動の基本は、ウォーキング。ほかに、自転車こぎや水中ウォーキング、階段昇降など、持続的でリズミカルな運動はすべて有酸素運動になります。

 

●筋トレもプラスして、腎活性効果を高める

 

 ただし、有酸素運動が良いからと言って、筋トレをおろそかにしていいわけではありません。

 

 ミドルエイジ以降は、健康な状態でも筋肉量が1年当たり1%ずつ減少していきます。全身の血行を促す筋肉のポンプ機能は、筋肉量が十分にあることで発揮されます。有酸素運動だけでは筋肉を増やす効果は少ないため、筋トレもぜひ取り入れましょう。

 

 「慢性腎臓病にかかると、運動不足や食事でのたんぱく質制限によって筋肉量が低下し、サルコペニア(筋肉減少症)のリスクが高くなるので、筋肉量の維持が重要です。特に下半身の筋肉をつけると、有酸素運動のときにも颯爽(さっそう)と大股で歩けるようになり、転倒も予防、日常的にも疲れにくくなるなど多くの効果が得られます」(上月氏