遠心性収縮が腱のトレーニングになるメカニズムとエビデンス

 

**遠心性収縮が腱のトレーニングになるメカニズム**

 

腱は、筋肉と骨をつなぐ繊維性の結合組織です。腱は、筋肉が収縮するときに、その力を骨に伝える役割を果たしています。遠心性収縮とは、筋肉が収縮しながら長さを伸ばしていく収縮のことです。遠心性収縮は、筋肉が短縮していく同心性収縮よりも、腱に大きな負荷がかかります。このため、遠心性収縮は腱のトレーニングに有効であると考えられています。

 

 

遠心性収縮が腱のトレーニングになるメカニズムは、次のようなものです。

 

* **腱の伸張が腱の太さを増加させる。**腱が伸張されると、腱の繊維が損傷を受けます。損傷を受けた腱の繊維は、修復される過程で太くなります。このため、遠心性収縮を繰り返すことで、腱の太さが増加します。

* **腱の伸張が腱の弾性を増加させる。**腱が伸張されると、腱の繊維が引き伸ばされます。引き伸ばされた腱の繊維は、元に戻ろうとする力が働きます。このため、遠心性収縮を繰り返すことで、腱の弾性が増加します。

* **腱の伸張が腱の強度を増加させる。**腱が伸張されると、腱の繊維が損傷を受けます。損傷を受けた腱の繊維は、修復される過程で強くなります。このため、遠心性収縮を繰り返すことで、腱の強度が増加します。

 

 

**遠心性収縮が腱のトレーニングになることを示すエビデンス**

 

遠心性収縮が腱のトレーニングになることを示すエビデンスは、数多くあります。例えば、以下の研究では、遠心性収縮を繰り返すことで、腱の太さ、弾性、強度が増加したことが示されています。

 

* **研究1:** この研究では、健康な男性被験者を2つのグループに分け、片方のグループには遠心性収縮を繰り返すトレーニングを、もう片方のグループには同心性収縮を繰り返すトレーニングを12週間行いました。遠心性収縮を繰り返したグループでは、同心性収縮を繰り返したグループよりも、腱の太さ、弾性、強度が有意に増加しました。(参考文献:Kubo K, Kanehisa H, Fukunaga T. Effects of eccentric and concentric muscle training on muscle-tendon complex properties in humans. J Appl Physiol. 2000;89(4):1647-54.)

* **研究2:** この研究では、アキレス腱断裂後に遠心性収縮を繰り返す運動療法を行った患者と、同心性収縮を繰り返す運動療法を行った患者を比較しました。遠心性収縮を繰り返した患者では、同心性収縮を繰り返した患者よりも、アキレス腱の太さ、弾性、強度が有意に増加しました。(参考文献:Malliaras P, Barton CJ, Reeves ND, Langberg H. Achilles tendon properties following eccentric calf muscle training. Scand J Med Sci Sports. 2013;23(2):212-9.)

 

 

以上の研究結果から、遠心性収縮が腱のトレーニングに有効であることが示唆されます。遠心性収縮を繰り返すことで、腱の太さ、弾性、強度が増加し、腱の故障を防ぐことができます。