座位から立位への動作における股関節内転筋の活性化により、片麻痺患者の筋活性化タイミングと立ち上がりメカニクスが改善される

 

[背景・目的] 長い立ち上がり(sit-to-stand, STS)時間は、機能的なモビリティが損なわれていることの特徴として認識されている。股関節内転筋の同時収縮によるSTSパフォーマンスのバイオメカニクスの変化は研究されておらず、STSレーニング中の股関節内転筋活性化の使用に対する適応を制限する可能性がある。

[方法] 片麻痺患者10名(平均年齢61.8歳、受傷期間29.8±15.2ヶ月)が、両脚でボールを挟む場合と挟まない場合でSTSを実施した。ボールを挟んだ場合と挟まない場合の関節モーメント,地面反力(ground reaction force, GRF),椅子反力,動作時間,筋電図の時間指標を対照条件から算出し,ボールを挟んだ場合のものと比較した.

[結果] ボールを挟む条件では、非麻痺肢では、負荷率の増加に伴い、上昇相における垂直方向のGRFのピークが減少し、麻痺肢では、膝伸展モーメントのピークが早く発生することが観察された。ボールを挟むSTSでは、ヒラメ筋、前脛骨筋と大殿筋、中殿筋の早期活性化が認められた。

画像

[結論] STSの際にボールを挟むことで、ヒラメ筋、前脛骨筋、大殿筋、中殿筋の収縮タイミングが増加し、より対称的な立ち上がり力学が得られることから、片麻痺者のSTSの際にボールを挟むことが推奨される。