米国疾病管理予防センターによると、50歳以上の女性の約20%、男性の約5%は骨粗しょう症を発症する。
そう言われると少し不安になるけれど、実はこのたび、定期的な運動で骨密度が高くなるという研究結果が発表された。
科学情報誌『Scientific Reports』によると、この研究では2011~2018年の米国民健康栄養調査に参加した20~59歳の米国人9787名のデータが用いられ、研究チームは参加者の骨密度や体脂肪率、運動量や座っている時間の長さなどを分析した。 すると、いつも座ってばかりの人は腰の骨密度が低く、体脂肪率が高い傾向にあった。反対に、普段からアクティブな人は骨密度が高く、体脂肪率が低かった。
「私たちの研究結果を見る限り、運動は、男性にとっても女性にとっても骨の健康を維持する上で不可欠な要素であり、体脂肪の低下と強く関連しています」と研究チームは綴っている。「骨粗しょう症と肥満の予防に関する医療政策の担当者は、座る時間を減らし、運動量を増やすことを念頭に置くべきでしょう」 でも、定期的な運動で骨密度が高くなるのは一体なぜ? その理由を専門家が教えてくれた。
定期的な運動で骨密度が高くなる理由
先ほどの研究チームは、運動と骨密度の関連性を見つけただけで、運動が骨密度に良い影響を与える理由は探らなかった。でも、運動と骨密度の関連性が指摘されたのはこれが初めてではない。 「今回の研究結果は、すでに証明されていた運動と骨密度の関連性を裏付けています」と説明するのは、米ラトガース大学ロバート・ウッド・ジョンソン・メディカルスクールの家庭医学・コミュニティヘルス学部長で教授のアルフレッド・タリア医学博士。「骨密度の低下は骨粗しょう症と呼ばれており、それが原因で股関節や脊椎を骨折すると、その人の寿命が何年も縮むことになります。
通常、骨密度は年と共に低下します」 運動で骨密度が高くなる仕組みは少し複雑。でも、運動で骨に物理的なストレスが加わると、カルシウムと骨を形成する細胞が沈着しやすくなり骨の再構築が促進される。その結果、骨が強くなり、その密度も高くなる。 米国立医学図書館によると、私たちの体は普段から、古い骨を再吸収して新しい骨を作り出すという作業をしている。そして、この古い骨と新しい骨のバランスが取れている限り、骨は健康な状態でいられる。
そもそも骨密度とは
米ベイラー医科大学の整形外科学助教授オマル・アタッシ医学博士によると、骨密度は骨の質を表している。「20代で骨密度が低い人は少ないですが、年を取ると骨が徐々に弱くなり、多孔質になっていきます」。アタッシ博士は、健康な骨を丈夫な間柱になぞらえる。それが「年を取ると、石膏ボードの壁のように穴だらけになって弱くなります。重い絵を飾ろうにも、石膏ボードの壁では支えられないので、間柱に釘を打ち込みますよね」。それと同じで、骨密度が低下した骨は、転倒や衝突の衝撃に耐えられなくなる。骨が間柱のように強ければ、ちょっと転んでもアザができる程度で済みますが、石膏ボードのように弱いとすぐに折れてしまいます」
骨密度を高めるためにできること
米国立医学図書館によると、カルシウムとビタミンDを摂取するのは骨にいい。でも、一部の習慣は骨のためにならないので要注意。米プロビデンス・セントジョン・ヘルスセンター付属パシフィック神経科学研究所で神経筋・神経診断学部長および転倒防止学部長を務めるウィリアム・バクストン医学博士によると、飲酒は骨粗しょう症のリスクを高める(ちなみに喫煙も)。
運動にプラスして「十分なカルシウム(乳製品やホウレン草のような緑の葉物野菜)とビタミンBを含む栄養価の高い食生活を送っていれば、骨折のリスクを抑えることができます」とタリア博士。 米国疾病管理予防センターによれば、かかりつけ医と骨を強くする薬について話し合うのはいいけれど、骨を弱くする薬の服用は避けるべき。
骨密度の改善に役立つ運動の種類
どんな運動も健康にいいけれど、一部の運動は骨密度の低下と骨粗しょう症の予防に特に効果的とされている。
「骨の健康を維持して骨粗しょう症を防ぐ方法の1つは、体重負荷運動(自分の体重がかかる運動)をすることです」とバクストン博士。
タリア博士によると、ウォーキング、ガーデニング、階段の上り下り、ダンスといった骨に負荷をかけるアクティビティは、転倒を防ぎ、骨密度の低下を最小限に抑える上で役立つ。 自分の骨密度が不安な人や骨粗しょう症の家族歴がある人は、かかりつけ医に相談を。病院では、まず二重エネルギーX線吸収測定法(DXA法)という方法で骨をスキャンし、現在の状態をチェックすることが勧められるかもしれない。その結果に基づいて、骨密度を改善するためのアドバイスを受けるのは賢明なアプローチ。