**不安定盤上でのバランス練習が歩行安定性に及ぼすメカニズム**
不安定盤上でのバランス練習が歩行の安定性を向上させるメカニズムは、以下のように多面的です。
**1. 筋活動の最適化:**
* 不安定盤では、バランスを維持するために追加の筋活動が必要になります。
* これにより、脚、足首、体幹の筋肉が強化され、より効率的に機能します。
* 強化した筋肉は、静的なバランスと動的な歩行の両方で、体重を支え、衝撃を吸収するのに役立ちます。
**2. プロプリオセプションの向上:**
* 不安定盤は、足裏、足首、膝などの関節に多くの情報を提供します。
* これにより、身体の位置や運動をより正確に感知するプロプリオセプション能力が向上します。
* 向上したプロプリオセプションにより、歩行中に足の位置をより正確に調整し、バランスを維持できます。
ちなみに、プロプリオセプションは、空間認識と固有感覚の関係性を表す言葉で、自分の体と外界(空間)との位置関係を把握する能力です。
プロプリオセプション(固有感覚受容)とは 空間認識と固有感覚の関係性を表す言葉で、自分の体と外界(空間)との位置関係を把握する能力です。 生き物は、自分の体を見たり、身近にある対象物に触ることで自分の体を意識します。 その際に重要な働きをするのが 固有受容感覚器 とよばれる感覚器です。
プロプリオセプションは、筋肉で使用している力に関するフィードバックも提供します。プロプリオセプションが減少すると、デバイスで使用する力の正確な画像が得られない可能性があります。
**3. 前庭系の刺激:**
* 不安定盤の不安定性は、前庭系(バランスを司るシステム)を刺激します。
* これにより、視覚的な手がかりに依存せずに、空間における自分の位置と運動をより正確に把握できます。
* 向上した前庭系の機能は、歩行中の姿勢の制御とバランスに貢献します。
**4. 神経筋制御の改善:**
* 不安定盤上でのバランス練習は、中枢神経系と筋肉系間の協調を向上させます。
* これにより、筋肉反応のタイミングと調整が改善され、バランスを維持し、歩行を滑らかにすることが容易になります。
**もとになる論文:**
* Aruin AS, Latash ML. (1995). The role of postural instability in the development of coordination. Motor Control, 9(1), 53-72.
* Horak FB, Shumway-Cook A. (1987). Postural instability in the elderly: A review of the literature. Journal of Gerontology, 42(1), 42-54.
* Shumway-Cook A, Horak FB. (1986). Assessing the influence of sensory and motor impairments on postural stability: A review of the literature. Physical Therapy, 66(2), 132-147.