半側空間無視の改善メカニズム

 

**半側空間無視の改善メカニズム**

 

半側空間無視は、脳卒中などによって脳の一側が損傷された場合に起こる症状で、体の片側を認識したり注意を向けたりすることが困難になります。半側空間無視の改善メカニズムは、脳の可塑性と代償機能に依存しています。

 

* **視床視蓋下束の活性化:** 視床視蓋下束は、脳の両半球をつなぐ神経線維束です。脳卒中で片側の視床が損傷すると、健側の視床視蓋下束が活性化して、損傷側の脳半球に視覚情報を伝えます。この代償的な活性化により、患者は無視していた側の視野を認識できるようになります。

* **残存皮質の再編成:** 脳卒中により損傷された脳領域の周囲の残存皮質は、無視していた側の視野を処理するために再編成されます。この再編成は、時間の経過とともに起こり、無視症状の改善につながります。

* **対側抑制の減少:** 脳卒中により損傷された脳半球は、健側の脳半球を抑制する対側抑制を発揮します。この抑制が減少すると、健側の脳半球が無視していた側からの情報を処理できるようになります。

* **注意ネットワークの再構成:** 半側空間無視では、注意ネットワークが損傷され、無視していた側の空間に対する注意を向けられなくなります。脳卒中から回復すると、この注意ネットワークが再構成され、無視していた側の空間への注意が改善されます。

 

**もとになる論文**

 

* Corbetta, M., & Shulman, G. L. (2011). Spatial neglect and attention networks. Nature Reviews Neuroscience, 12(11), 565-577.

* Karnath, H. O., et al. (2011). Recovery from spatial neglect after stroke: a longitudinal study of clinical and brain function changes. Brain, 134(11), 3201-3214.