半側空間無視6


ニューロモディレーション技術の応用

 

近年では、反復経頭磁気刺激(rTMS)や経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を用いたニューロモディレーション・アプローチも積極的に導入され、一定の臨床効果をあげている。例えば、急性期ー慢性期脳卒中患者を対象にして、非病巣側の頭頂葉に低刺激rTMSを加えて、活動を抑制することで、その刺激中に線分二等分試験の成績が向上することが報告されている。

 

 

病態メカニズムに応じた臨床意思決定のため

 

注意に関与する主たるネットワークは、背側注意ネットワークと腹側注意ネットワークである。背側注意ネットワークはトップダウン注意に関与し、腹側注意ネットワークはボトムアップ注意に関与する。

 

 

Posnerは、ポズナー課題を開発し(上図)、背側と腹側注意ネットワークの違いを研究した。左USNでは、左空間のターゲット刺激の反応時間が遅延することが示されている。BITでは確認されないボトムアップ注意機能を調べることができ、BITの成績が良好であったUSN患者であっても、ポズナー課題における左空間でのターゲット刺激に対しては反応が遅延することが報告されている。慢性期USN患者では、ポズナー課題が最も検出しやすい評価方法と言われている

 

 

 

リハビリテーション医療のほとんどは、運動や行為の学習、練習に注がれている。この際、利用するのは中央実行系ネットワークである。背側注意ネットワークは中央実行系ネットワークを構成することから、リハビリテーション医療においては、このネットワークが強化されることで、運動あるいは行為の回復に導く。

 

目的指向的(課題指向的)な練習では、基本的にターゲットに注意を選択的注意させ、それに対して集中するように要求する。その一方で、その他の刺激を極力排除するように仕掛けるため、腹側注意ネットワークを作動する機会が少ない

 

 

河島らは、トップダウン注意のみならずボトムアップ注意を定量的に評価できるツールを開発した。これは、線分抹消試験のようにトップダウン注意を調べる課題に加えて、ターゲットが突然に、あるいはランダムに点滅しながら現れ、それを視線で捉えることでボトムアップ注意を喚起させるところに特徴がある