半側空間無視5



USNに対する従来型臨床介入

 

USNに対する特異的な介入方法として、多くのアプローチがこれまで行われてきた。その方法は、トップダウンアプローチとボトムアップアプローチに大別される。

 

トップダウンアプローチは意識的な再学習や代償のことであり、主には意識を顕在化させながら注意の偏りを矯正していく方法である。

 

一方、ボトムアップアプローチは、意識に上らない一側からの感覚刺激によって空間性注意の方向を矯正するものである。

 

 

意識を顕在化させる代表的なものとして、視覚走査による左側への自発的な眼球運動を走査する方法がある。このアプローチでは、言語を利用しながら左空間へ視線を移させ、その空間に対して注意を喚起させていく手続きをとる。ゆえに、ADL練習の際、左空間における対象に見落としがあった場合、言語でフィートバックし修正をかけるアプローチもある種同様な手続きであると考えてよい。ADL練習では、無視側の上下肢を無視空間で使用させ、それによって左空間に対して注意を促す方法がある。このアプローチでは、体性感覚フィードバックを利用するとともに、特に上肢・手の使用によって目と手の協応が促され、視線を積極的に左空間に移動させることが可能になる

 

 

Robertsonらは、麻痺側上肢を動かしながら、その身体をみるといったspatio-motor cueing というアプローチを考案したが、それは随意的な運動だけでなく、セラピストなどのリハビリ専門職が麻痺側上肢を受動的に動かす際、動かされている身体を見る場合でも効果がみられると報告されている。運動障害が重度であり、その回復の見込みが少ない場合は、受動的運動を行い、動かされている身体から発せられる体性感覚フィードバックに加えて、その身体運動の変化を患者自身が視覚で確認することによって視覚と体性感覚の情報を統合していくような手続きになる。

 

こうしたアプローチは、意識的に左空間にある自己の身体を視覚的に観察するところに特徴がある。いずれにしても、麻痺側に意識を向けながら課題を実行したり練習したりするところに特徴があり、背側注意ネットワークの活性には貢献するとかんがえられることから、トップダウン注意の機能回復に向けたアプローチといえる。