半側空間無視3

 

机上検査とADLの違い

 

臨床上、線分抹消試験などの机上検査はクリアできるものの、歩行時や車いす駆動時にUSN症状が顕著になるのはなぜか。

 

机上検査のほとんどは線を抹消するといった目的に基づき課題を遂行するため主にトップダウン注意を利用するが、突然他人が視野に入りそれに対して注意を方向付けるボトムアップ注意を観察するものではないそして、机上検査の遂行よりも歩行時にはワーキングメモリー負荷量が増大するため、腹側注意ネットワークの機能が抑制され、それにより突然の刺激に応答できないことから、USN症状が顕著に表れることが想定される

 

反対に、ボトムアップ注意が機能的に優位な状況にある場合には、実行的注意でもあるトップダウン注意の活動が減弱することによって目標指向的な行動を阻害してしまう

 

いずれにしても、臨床現場における机上検査のような場面では、行為の学習や気づきを促すために、机上の限局した部分に対してトップダウン注意を向けることが多い。これは背側注意ネットワークによるトップダウン注意の活動を多く動員することになる。

 

しかし、自然的状況下で限局した部分に注意を向けていないような場面では意図の関与が少なくボトムアップ的に情報が発生するため、それらに対しては腹側注意ネットワークによるボトムアップ注意の活動を動員することが多くなる

 

 

つまり、双方の注意システムは状況に応じて適切かつ柔軟に切り替えられることで、どちらか一方に偏ることなくバランスの良い相互作用を保持している