半側空間無視

 

半側空間無視の責任病巣およびネットワーク

 

今日では、多くの研究より、USNは損傷箇所というよりも、右半球のネットワーク障害により起こると考えられている。したがって、頭頂葉損傷や前頭葉損傷であっても、あるいはそれらを結ぶ白質線維損傷でも、USNは出現するといえる。

 

近年では、USNは注意ネットワークの障害としてとらえられており、側頭ー頭頂部から前頭葉へと走っている神経線維の損傷の程度が無視症状の重症化と関連し、起始・停止の領域双方の皮質機能を低下させることが報告されている。

 

また、Karnathらは、USNの急性期の病巣は右の前頭葉頭頂葉、側頭葉と多岐にわたるものの、慢性化の病巣は右側頭葉に限局することを報告した。すなわち、腹側領域に病巣を持つケースにおいてUSNが慢性化することを示した。この研究より、USNの出現は多岐にわたるものの、それが続いてしまうケースは腹側注意ネットワークの機能不全によるものと想定される。

 

 

 

半側空間無視の発現にかかわる神経メカニズム

 

USNは視空間性(方向性)の注意障害と理解されている。通常、USN患者は、右方向の視野に存在する対象に選択的に注意することができるものの、左視野に存在する物体に視線を転換することが難しいといった症状を示す。例えば、USN患者であっても右視野に存在する対象を消去すれば左側に視線を移動できることが明らかにされている

 

右半球は左空間へ、左半球は右空間へと視線を向ける特性があり、左右の大脳半球は互いに抑制関係にあることから、情報の往来にバランスがとれ、それにより半側空間に注意が偏ることはない。このバランスが崩れると半側空間無視が生じると提唱したのがKinsbourneである。

 

この半球間相互作用の機能不全において、Mesulamは右半球は両側空間の注意を制御するのに対して、左半球は右空間の注意の制御のみであることから、右半球が損傷すれば右空間へ注意が偏ると説明する。