半側空間無視2

 

半側空間無視の発現に関わる神経メカニズム 

~続き~

 

 

人間が目的もって作業している際には、トップダウンに対象に対して注意を働かせる。この際、対象への注意の選択・集中は、後頭葉の視覚領域とともに、頭頂間溝、上頭頂小葉、前頭眼野といった脳の背側領域を活性化させる。この神経ネットワークを背側注意ネットワークと呼ぶ。

 

一方、予期していない刺激が外部から入り、その刺激に対して注意を即座に向ける場合に腹側領域が活性化する。こうした刺激誘導的なボトムアップ制御に腹側領域が関与し、これを腹側注意ネットワークと呼ぶ。

 

 

このように、注意の神経ネットワークには、前頭ー頭頂葉の機能的連結によって、意図的に注意を割り当てるトップダウン(能動的)注意を担う背側注意ネットワークと、側頭・頭頂ー前頭葉の機能的連結によって、外発的に生じた事象を検出し注意のシフトのトリガーとして作用する意図にはよらないボトムアップ(受動的)注意を担う腹側注意ネットワークが存在している。

 

 

ADLでは、この2つのネットワークがバランスよく機能することが重要である。

 

 

Shomesteinらは、ボトムアップ注意課題が困難なケースは、腹側注意ネットワークを構成するTPJに病巣があるものの、背側注意ネットワークを構成する上頭頂小葉は残存する。トップダウン注意課題が困難なケースは、その逆を示すことを明らかにした。

 

 

特筆すべきは、背側注意ネットワークは両半球に存在するが腹側注意ネットワークは右半球のみに存在する。すなわち、左USNの問題にはボトムアップ注意の低下が根幹にあるとする理由はこれに該当する

 

視覚的ワーキングメモリーの負荷量が多い能動的な課題を遂行しづらくなるため、刺激の見落としが生じることが明らかになっている。