半側空間無視4

 

従来型のUSNの評価とその扱い

 

USNの評価には、線分抹消試験を含んだ行動性無視検査(BIT)が広く使用される。この検査で、包括的な無視症状の把握が可能になる。しかし、机上検査結果と生活上の無視症状の乖離が指摘されている。中でも、慢性期では、BITのみでは軽微な無視症状の検出が難しいことが明らかになっている。

 

 

BITでは、主に対象の見落としや描き落としについて、減点法を用いて採点することから、探索に要した所要時間やターゲットに対する選択的注意の手続き、ならびに左右空間内での視線分布などを詳細に分析することが出来ない。ゆえに、BITのみでは不十分であり、いくつかの検査を組み合わせて病態を解釈することが望ましい。

 

 

 

 

図は、動画提示による視線の左右変更の差を示したものである。

 

 

この研究より、USN患者の注視点は提示される画像によって大きく影響を受けることが分かった。情報が多い動画(A)ではUSN群は右偏向しているが、情報が少ない動画(B)であれば左空間へ視線が向けることが可能であることが確認された

 

つまり、USNでも情報量や物的配置により空間偏向が変化することが示されたこのように、提示する情報を操作し、難易度を調整することで、視線を左側に向けることが出来るかを評価する必要がある。

 

情報を操作することで、USNであっても視線を左側に移動させることを確認することは、回復可能性を調べる上でも重要となる。

 

 

 

 

一方、ADLにおけるUSN症状を観察する方法としては、CBSがよく用いられる

 

 

このバッテリーの特徴は、各項目に対して客観(医療者・検査者が観察)と主観(患者による自己評価)に分けて採点を行うところである。つまり、客観評価と主観評価の差をみることによって、無視症状に対する病識の程度をスクリーニングできる

 

CBSは机上検査と比較して検出率が高いことから、動作時の無視症状を調べる有用な方法として認識されている。また、動作遂行時にはワーキングメモリーを用いなければならず、難易度が高いものであれば、非注意盲が出現することがある。

 

こうした動作遂行時には、非無視空間への頭頸部の偏向など姿勢を分析する必要があるとともに、視線の左右偏向を確認する