脱水と関節炎との相関関係

 

学術誌「American Journal of Epidemiology」に掲載された2014年の研究論文では、632人の痛風患者が、「気温が変化すると痛風発作が起きる」と答えている。適温時より高温時のほうが、痛風の発作が発生するリスクは40%高い。また、全身性エリテマトーデスと炎症性関節炎の患者も、気温が上昇する季節には関節痛がひどくなると訴えている。

こうしたケースの多くでは、暑さだけが痛み悪化の原因ではない。脱水もまた、関節痛を悪化させることがある。人間の体は、極端な暑さにさらされると、汗を出して体温を下げようとする。汗をかくと、体から水分が急速に失われて脱水状態となり、痛みを感じやすくなるため、関節痛が悪化するのだ

学術誌「Psychophysiology」で発表された2016年の研究結果では、普段は健康で慢性疾患がない人でも、軽い脱水状態になると、痛みを感じやすくなることが示されている。

脱水状態になると、体は「滑液」を補充しにくくなる。滑液とは、骨と骨のあいだを満たして、クッションの役割を果たす液体だ。これがなければ、骨同士が接触し、こわばりや痛みを感じやすくなる

 

温熱療法と暑さの違い

慢性痛のある人の多くが、効果的な疼痛管理として温熱療法を利用している。温かい湿布やパッドを当てると、痛みが和らぎ、血流が促され、関節のこわばりが軽減することがある。しかし、夏の猛暑が体に与える影響は、それとはまったく違う。

風呂に入ったり、温熱パッドを当てたりするときは、温度や温める時間の長さを調節することができる。風呂に入って温まりすぎたら、風呂から出れば済む話だ。温熱治療器ならスイッチを切ればいい。しかし太陽となると、そうはいかない。気候の暑さによって、脱水状態や疲労の発生リスクが上昇し、それが引き金となって痛みが増すことがある。

 

夏の関節痛悪化を予防するために

どんな気候の地域に住んでいる人でも、運動をしたり、十分な水分補給をしたりすれば、関節痛の悪化を防ぐことはできる。夏の暑さを避けるため、できるだけ屋内で過ごしてしまう人もいるかもしれない。その場合も体が硬くならないよう、ストレッチをしたり、軽度か中程度の運動に励んだりしよう。

暑い日に外出するときは、十分な水分補給を心がけてほしい。米国疾病予防管理センター(CDC)は、暑いところで仕事をするときは15~20分おきに250ccほどの水分を補給するよう勧めている



ただし、仕事を始める時点ですでに脱水状態になっている場合は、水分を十分に取ることができず、体が必要とする量に届かない可能性もあるという。脱水状態に陥らないためには、エネルギーを使う活動の開始前、最中、終了後と、一貫して水分を補給するのが一番だ。