高血圧を下げるのに最も効果的な運動は、アイソメトリック・エクササイズ(等尺性筋収縮運動

 

高血圧を下げるのに最も効果的な運動法を探している人は、ウォールシット(空気いす)やプランクといったアイソメトリック・エクササイズ(等尺性筋収縮運動、関節を動かさないで筋肉を収縮させる運動)を試すとよさそうだ。

 



これはつい最近、英医学誌「British Journal of Sports Medicine」に発表された研究に基づく知見だ。系統的レビューとメタ解析を行ったこの研究によると、アイソメトリック・エクササイズをしばらく続けると血圧は平均で上(収縮期)が8.24mmHg、下(拡張期)が4mmHg下がっていた



血圧の低下効果は、高強度のインターバルトレーニング(上4.08mmHg、下2.50メートルmHg)、ランニングやサイクリングなどの有酸素運動(上4.49mmHg、下2.53mmHg)、動的レジスタンス(いわゆるウエイトトレーニング、上4.55mmHg、下3.04mmHg)、有酸素運動とウエイトトレーニングの組み合わせ(上6.04mmHg、下2.54mmHg)よりも大きかった


もちろん、だからといって空気いすやプランクだけをやるべきだというのではない。実際、血圧の低下に関してなら、ほかのエクササイズでも関連性が示されている。ただ、今回の研究結果からは、毎週の運動のメニューにアイソメトリックを加えておくのがよいということは言えそうだ。

 


英国のカンタベリークライストチャーチ大学とレスター大学の研究チームは、1990年1月から2023年2月までに発表され、2週間以上の運動による介入後の血圧の変化について報告されているランダム化対照試験をサーチし、該当する270の試験を見つけた。そして、計1万5827人が参加したこれらの試験をメタ解析して評価した。

 

アイソメトリック・エクササイズでは、特定の筋肉を収縮させるが、筋肉の長さは変わらない。そのため、これをやってもドウェイン・ジョンソンのような筋肉隆々の体にはならない。アイソメトリック・エクササイズはむしろ、筋力をつけたり、維持したりするのに適している。



また、この運動では筋肉を一定時間緊張させ、弛緩させることを繰り返すうちに筋肉内の血流が改善されることから、血圧が低下する効果も見込まれる。



アイソメトリックにはもう1つ利点がある。それは、比較的簡単にできるという点だ。うつ伏せの状態で肘を曲げて床につき、つま先で体を持ち上げてその姿勢をキープするプランクは、床か地面があればどこでもできる。空気いすも、壁に背中を付けて立ち、端を少し離して膝を90度まで曲げ、しばらくキープしてからゆっくり立ち上がるというものなので、必要なのは壁だけだ。



プランクは最低30秒は姿勢を保ち、それを1日2〜3セットするようにしたい。慣れないうちは30秒もたたないうちに体が震えてくるかもしれないが、心配ない。そういう場合はもっと短い時間から始めて、合計で30秒2〜3回分になるようにすればいい。

 


空気いすは2〜3回のセットを週に3回はするようにしたい。このエクササイズは退屈に思えるかもしれないが、電車やバス、注文などを待っている間など、日々の生活のちょっとした合間にやることもできるだろう。



繰り返しになるが、アイソメトリック・エクササイズだけを毎週やればよいという話ではない。世界保健機関(WHO)は成人について、週に少なくとも150~300分の中強度の有酸素運動(または少なくとも75~150分の強度の有酸素運動)と2日以上の筋力強化運動を推奨している。これにプランクや空気いすなどを追加するようにしよう。



1日の大半を座って過ごしているという人は多いだろうから、そのうちの少しの時間、背もたれを壁に代えてスクワットしてみるのもよいかもしれない。