立位バランスに必要な様々な感覚の貢献割合

 

立位バランスを維持するためには、主に三つの感覚系が関わっています:視覚、前庭感覚(内耳にある平衡感覚)、そして前述した固有感覚(プロプリオセプション)。これらの感覚系が相互に情報を統合し、身体の安定を維持します。若年者と高齢者でのこれら感覚の貢献割合については、研究や評価方法によって異なる結果が出ることがありますが、一般的な傾向を紹介します。

 

 

若年者の場合:


視覚:約20%程度の貢献。視覚情報は、環境との関係を認識し、バランスを取るために重要です。


前庭感覚:約20%程度の貢献。前庭器官からの情報は、頭部の動きや位置を感知し、身体のバランスを調整します。


固有感覚:約60%程度の貢献。身体の位置や動きを感知し、筋肉の動きを調節することで、立位バランスの大部分を占めます。

 


高齢者の場合:


視覚:若年者と同様またはそれ以上。しかし、視力の低下により、バランス維持における視覚の役割は制限されることがあります。


前庭感覚:若年者と同様またはそれ以上。しかし、内耳の老化により前庭感覚の効率が低下することがあります。


固有感覚:若年者よりもその重要性が増す。しかし、高齢者では固有感覚が低下しているため、バランス維持に苦労することがあります。

 


高齢者では、これらの感覚の低下により、立位バランスを維持するために各感覚系による貢献の再調整が必要になります。特に、固有感覚の低下は高齢者における転倒リスクの増加に直接関連しているため、固有感覚のトレーニングを通じてこの感覚を強化することが、高齢者の立位バランスの改善には非常に重要です。