加齢に伴う下肢筋力の低下と、矢状面での姿勢制御能力に与える影響

 

加齢に伴う下肢筋力の低下が、矢状面での姿勢制御能力に与える影響については、いくつかの研究から以下のことがわかっています。

 

足関節
Jonkers et al. (2003)の研究では、高齢者は若年者に比べ、立位時の足関節底屈筋力が低下していることが報告されています。足関節底屈筋は矢状面での前方動揺に対抗する重要な役割を担っているため、この筋力低下は前方への転倒リスクを高めます

 

膝関節
Simoneau et al. (2007)によると、高齢者は膝伸展筋力が低下しており、これが立位時の膝関節伸展モーメントの発揮を阻害することがわかっています。膝関節伸展モーメントは体重心の後方移動に対抗するため、この能力低下は後方への転倒リスクを増加させます

 

股関節
Madigan et al. (2004)の研究では、高齢者の股関節屈筋力と伸展筋力がともに若年者より低いことが明らかになっています。股関節の筋力は前後方向の動揺制御に関与するため、筋力低下は矢状面での姿勢制御能力を大きく損なう要因となります。

 

 

総合的影響


Whipple et al. (1987)の研究は、加齢に伴う下肢筋力低下が、矢状面での姿勢制御時の下肢関節モーメントの最大発揮能力を低下させることを示しています。つまり、高齢者は最大能力付近での動揺に対応しにくくなり、転倒しやすくなるのです。

 

また、Mademli et al. (2008)は、下肢筋力の加齢変化とバランス能力の関係を検証し、特に股関節と足関節の筋力低下がバランス障害に強く影響することを報告しています。

 

このように、加齢に伴う主要な下肢筋群の筋力低下は、矢状面での姿勢制御時の関節モーメント発揮能力を低下させ、重心動揺に対する姿勢制御能力を著しく損なう要因となっていることがわかります。高齢者のバランストレーニングでは、これらの筋力低下に着目することが重要です。