「心不全とは、心臓が悪いために息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなって生命を縮める病気です」と言うのは、九州大学大学院医学研究院循環器内科学の筒井裕之教授だ。
心不全は、高血圧、糖尿病、動脈硬化といった生活習慣病がリスク要因になる(ステージA)。
これらによって心筋梗塞や狭心症など心臓病を起こすと、心機能が傷害を受けたり、長期的に負荷を受け(ステージB)、急性心不全を発症する。
入院し治療を受ければ回復するが、心機能は完全には良くならず慢性心不全に至る(ステージC)。
慢性心不全に対する薬物治療が行われるが、急性増悪で入退院を繰り返し、薬も効きづらくなる。ペースメーカーや植え込み型除細動器といった非薬物治療でも対処できなくなる(ステージD)。
「着目すべきは、2型糖尿病ではない患者が半数以上研究対象に含まれている点です。今後は2型糖尿病がない患者にも、心不全の治療薬としてSGLT2阻害薬が使われるでしょう。ただし現段階では、日本では糖尿病の治療薬としてのみの承認です。糖尿病患者で心不全リスクが高い人は、状況を見て、SGLT2阻害薬に切り替えるという方法もあります」
1日6グラム以下の塩分制限、肥満解消も外せない。心不全はBNPまたはNT―proBNPという心筋ストレスマーカーでチェックできるので、特に一度でも心筋梗塞、狭心症などの心臓病を起こしたことがある人は、受けた方がいい。血液検査で簡単に分かる。
すでにステージC以降、つまり慢性心不全の域に入っていたら……。8月に従来薬とは作用機序の違う新薬「エンレスト(一般名サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物)」が発売されたが、それ以外にもエビデンスのある治療薬がこの2年間でもいくつか登場している。早い段階で手を打てば生命予後を延ばせる可能性はある。