手術はなくなる?心臓弁の交換や動脈硬化はカテーテルで治療

 

 高齢者に多い慢性心不全の代表的な原因が「僧帽弁閉鎖不全症」だが、2018年4月に新治療法が保険適用になった。

「僧帽弁とは心臓の左心房と左心室の間にある大きな2枚の弁で、血液の逆流を防止してくれます。これがうまく閉じないと、左心房から左心室に流れる血液の大部分が逆流し、左心室に負担がかかり、息切れや不整脈などの症状があらわれます」

 

 

 僧帽弁閉鎖不全症の患者は、発症から5年程度で動悸や立ちくらみ、全身の倦怠感を引き起こす心房細動を発症して重篤心不全に移行したり、ペースメーカーが必要な強度の不整脈を起こしたりする。心房細動による脳梗塞も多い。統計上は発症10年程度で9割が心臓死するか、外科手術が必要となるとされる。

 この病気を開胸手術せずにカテーテルで行うのが「経皮的僧帽弁接合不全修復術」だ。先端にクリップの付いたカテーテルを下肢静脈から挿入し、不具合の生じた2枚の弁をクリップで留め、逆流を制御する。

 心臓の左心室の出口にある弁が動脈硬化などの原因でうまく開閉できなくなると出口が狭窄する。これが大動脈弁狭窄症だ。うまく血液を送り出せないだけでなく、狭い出口に血圧がかかるため心臓の筋肉が肥大する原因にもなる。これを解決する新時代の技術TAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)は13年に保険適用になった。傷んだ大動脈弁をカテーテルで人工弁に取り換える治療法だ。

 

経皮的僧帽弁接合不全修復術 - YouTube

 

 

 一方で心臓突然死の大半を占める「虚血性心不全」にも新たな治療法が登場、普及しつつある。虚血性心疾患とは心臓に十分に血液が供給されず、心臓の筋肉自体が貧血状態になる病気のこと。狭心症心筋梗塞があり、前者は心臓に向かう冠動脈が動脈硬化などで狭くなっている状態、後者は冠動脈が詰まり心臓の筋肉が壊死した状態を指す。

「高齢者だけでなく、最近は40~50代の患者さんも増えています。喫煙、食生活の乱れ、ストレスなどで血管が傷つくことによる動脈硬化血栓が原因です。治療法としてカテーテルを用いてバルーンで血管を広げたり、ステントという金属管で広げた血管を維持したり、局所に血栓溶解剤を流すなどを行う経皮的冠動脈治療(PCI)があります」

 高度に石灰化した動脈硬化には「ロータブレーター」治療が行われる。カテーテルの先端に高速回転する人工ダイヤモンドをとりつけて閉塞部分を削り取り、血管内を広げる治療法だ。