低酸素の有無をどのようにアセスメントすればよいか?



臨床において、パルスオキシメーターの誤差が生じたり、血ガスデータがない場合があります。
 


そのような場合は、症状から低酸素血症の重症度を推定するこができるため、
フィジカルアセスメントを活用し、状態の把握に努めることが大切です。
 

 

 

 

動脈血酸素分圧(PaO2)の数値

 

PaO2は患者さんの年齢や疾患、病態によって変化するため、正常値は80~100TorrSpO2  95~98%とされる

 


具体的には、症状から推定される血液ガスデータでのPaO2値として、
呼吸困難や動悸がみられる場合は40から60 mmHg(SpO2  75~90%

 

 

呼吸促拍、不穏、見当識障害、チアノーゼ、不整脈がみられる場合は20から40 mmHg(SpO2  35~75%

 

 

徐脈や昏睡がみられる場合は20 mmHg以下(SpO2  35%以下に下がっているといわれています(文献 1)。

 

 

 

血中酸素飽和度(SaO2 )と動脈血酸素分圧(PaO2)の関係

 

血中酸素飽和度は血液中のヘモグロビンに何%の酸素が結合しているかを示す数値です。この数値はパルスオキシメーターで測定した経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)で確認できます。また、この数値は動脈血から直接測定した動脈血酸素飽和度(SaO2)と強く相関しており、SpO2とSaO2の値はほぼ同じになります。

 

動脈血酸素分圧(PaO2)は、赤血球中のヘモグロビン分子に酸素を結合させる駆動力として機能しています。この酸素とヘモグロビンとの結合率を示したものが酸素解離曲線です。

 

 

 

酸素解離曲線は、縦軸にヘモグロビンと結合している動脈血酸素飽和度(SaO2)を、横軸に動脈血酸素分圧(PaO2)をとると、S字状(シグモイド曲線)となります。正常時の動脈血酸素分圧(PaO2)は100mmHgの時に、動脈血酸素飽和度(SaO2)は98%であり、曲線は水平に近く酸素分圧が少し低下しても酸素飽和度は維持されている為、抹消組織までの酸素運搬機能は高い状態です。

 

 

 

低酸素血症時の動脈血酸素分圧(PaO2)が60mmHgの場合は、動脈血酸素飽和度(SaO2)は89%となり、それ以降は酸素分圧が少し下がるだけでも曲線は急勾配となっているので酸素飽和度は一気に下がります。

 

 

つまり、身体末梢組織への酸素の供給が極端に低下している状態に陥ります。

 

 

 

SaO2値とPaO2値の覚え方

 この酸素解離曲線に照らし合わせれば、SaO2(SpO2)測定時にはPaO2値も推測できることになります。しかし、素早い評価が求められることの多い臨床では、それはなかなか難しいもの。そこで、ここでは覚えておきたいポイントを紹介します。

 まずは、SaO2とPaO2の正常値を覚えます。これは「PaO2 80 ~ 100Torr、SaO2 95 ~ 98%」となります。

 そして、呼吸不全の定義となる「PaO2 60Torr、SaO2 90%」を覚えておきます。図を見るとわかるように、ここから曲線は急激に下降していきます。つまり、「PaO2 60Torr、SaO2 90%」以下になると、SaO2値は急激に落ちていくことになります。

評価のポイントとなるPaO2とSaO2の値