立ち上がり動作のバランスの捉え方

 

 

 

バランスのレベル

 

 

鈴木はバランスとその調整能力を4つのレベルに分類している。

 

 

レベル1:圧中心を調整して重心の投影点を支持基底面のほぼ中央に保持できる段階。

レベル2:支持基底面の全領域に重心の投影点を保持できる段階。支持基底面の圧中心が移動できる範囲は限られており、それを安定性限界と呼ぶが、その外縁に近づくほどCOGーCOPモーメントアームの微調整が必要となり、レベル1よりもバランス保持の難易度が高いことが示される。

レベル3:  重心の投影点を支持基底面内で適切に移動することが出来る段階。

レベル4:  支持基底面を適切に変えて、重心を移動することが出来る段階。

 

 

以上をまとめると、バランスの分類としてレベル1及び2が静的バランスレベル3と4が動的バランスに相当し、そのような位置関係を調整できる各能力(静的および動的バランス能力)が立ち上がり動作を含む日常生活活動の安定性や効率性を保障している。

 

  

 

 

 

 

 

バランス能力低下を疑わせる立ち上がり動作

 

 

ゆっくりとした立ち上がり動作

 

動作速度を緩めたゆっくりとした運動は、stabilization strategy(安定戦略)をとることが知られている。立位での支持基底面内に重心の投影点を着実に入れた後に、重心を上方へ転じさせるパターンがある。

 

重心の前後移動や上方移動を円滑に行うだけの動的バランス(バランス3,4レベル)の能力が低下していることから、重力モーメントの積極的活用がむつかしく、結果的に動作時間が延長する

 

藤澤は、健常成人データより4秒を超えた場合にバランス能力の低下が疑われるとし、ひとつの客観的な指標となる

 

 

 

下記は異なる速度条件での立ち上がり動作時の重心軌道であり、異なる動作パターンにて立ち上がり動作を行っていることがわかる。

 

        

 

速い動作では、動作速度を高めて慣性力を利用したmomentum strategy(運動量戦略)にて立ち上がりを行っている。これは、動的バランス能力を保持していることで可能となる。

 

ゆっくりとした動作では、COG-COPモーメントアームを極力大きくせずに動作速度を緩めて、重心を着実に上昇させるstabilization strategy(安定戦略)にて立ち上がり動作を行っている。動的バランス能力が低い場合に、この安定戦略にて立ち上がり動作を行われる

 

 

 

https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/48/4/48_48-4kikaku_Suziki_Makoto/_pdf