荷重下における膝関節伸展時の大腿部と下腿部の筋肉の貢献度について、具体的な数値を交えて詳しく説明します。
大腿部の筋肉、特に大腿四頭筋は膝関節伸展において主要な役割を果たします。研究によると、大腿四頭筋は膝関節伸展時に全体の約70%から80%の力を発揮するとされています。大腿四頭筋の中でも、特に中間広筋が重要な役割を果たしており、膝関節が屈曲した状態での伸展運動時に最大で50%程度の膝伸展トルクに寄与することが報告されています10。
具体的な数値として、健常者群では中間広筋の%MVC(最大随意収縮時の活動量に対する割合)が434.9±131.0、慢性腰痛群では338.6±108.9という結果が得られています67。これらの数値は、大腿四頭筋、特に中間広筋が膝関節伸展において非常に重要な役割を果たしていることを示しています。
一方、下腿部の筋肉、特に腓腹筋やヒラメ筋も膝関節伸展に寄与しますが、その貢献度は大腿部の筋肉に比べて相対的に低く、約20%から30%程度とされています。しかし、これらの筋肉も重要な役割を果たしており、特に変形性膝関節症(膝OA)患者では、大腿四頭筋の発揮張力が低下する一方で、ヒラメ筋や腓腹筋の張力が膝伸展に寄与していることが明らかになっています。
具体的な数値として、健常高齢者と比較して、膝OA患者の大腿四頭筋による膝伸展角加速度は2656±705°/sec²であり、健常高齢者は3904±652°/sec²であったことが報告されています11。この差は、下腿部の筋肉が代償的に働いていることを示唆しています。
さらに、クラウチングスタートからの1歩目支持期における研究では、腓腹筋による足関節底屈トルクが規格化時間75%で最大となり、その後はヒラメ筋よりも大きなトルクを発揮することが確認されています12。これは、下腿部の筋肉が膝関節伸展時に重要な役割を果たしていることを示しています。
結論として、荷重下における膝関節伸展時には、大腿部の筋肉(特に大腿四頭筋)が約70-80%の貢献をし、下腿部の筋肉が約20-30%の貢献をしていると考えられます。ただし、これらの割合は個人の状態や特定の運動条件によって変動する可能性があります。この知見は、リハビリテーションやスポーツトレーニングにおいて、大腿部と下腿部の筋力バランスを考慮したプログラム設計に重要な示唆を与えます。