1,胸鎖乳突筋はこんな筋肉
起始 |
胸骨柄、鎖骨近位部 |
停止 |
側頭骨乳様突起 |
支配神経 |
副神経、頚神経叢筋枝 |
髄節 |
C1ー3 |
作用 |
両側同時収縮で警部屈曲 頚椎同側側屈、対側回旋 |
英語 |
Sternocleidomastoid(略:SCM) 読み方:スターノクライドマストイド |
胸鎖乳突筋は胸骨に起始する胸骨頭と、鎖骨に起始する胸骨頭から、側頭骨の乳様突起と後頭骨上項線に停止します。また、胸骨頭と鎖骨頭の間には小鎖骨上窩と呼ばれる空隙があり触察することも可能です。
支配神経は、脳神経である副神経と頸神経叢の2重神経支配であり、副神経が運動成分を、頸神経叢が知覚成分を含んでいます。基本的な作用は、「両側性の活動で頸部を屈曲、一側性の活動で同側への頸部側屈、反対側への回旋」ですが、条件があり警部が正しい位置にある場合のみ、教科書的な作用になります。
胸鎖乳突筋は度々、ヘッドフォワード姿勢の一要因として取り上げられますが、この時の運動作用は上記作用と異なります。屈曲伸展に関していうと、乳様突起が環椎後頭関節の後方に位置するようなヘッドフォワードの場合、頸部を伸展を強める走行になり、収縮開始時における頭蓋の位置によって異なる運動作用となりますので注意が必要です。
筋肉の作用は、上記のように「骨の位置が正しい位置にあったとして…」という前提条件を含んだ作用が度々、現れますのでしっかりと文字で覚えるのではなく、場所の理解を怠らないことをお勧めいたします。
胸鎖乳突筋は、白筋線維多く(約65%)、赤筋線維の割合が低い(約35%)(E Cvetko.2012) 。高齢者では、胸鎖乳突筋における白筋線維と赤筋線維の割合が変化します。
2.胸鎖乳突筋の作用
胸鎖乳突筋のもう一つの重要な機能は、顎関節を機能させるこ とです。咀嚼時には三叉神経-頸部反射が胸鎖乳突筋の活動を刺激しますが、胸鎖乳突筋の介入が顎関節の最適な咬合のための基本であることが証明されています。
下顎の咬合の変化は胸鎖乳突筋の機能を変化させ、筋肉の協調性の障害(首の傾き)を引き起こします。片側の咀嚼時に、胸鎖乳突筋の活動は咬筋と同期していますが、両側の咀嚼時には、胸鎖乳突筋は咬筋の介入を予期しており、頸部の安定に関与していることが示唆されています。(S-X Guo.2017)
3.胸鎖乳突筋のトリガーポイント
トリガーポイント、定義としては「過敏化した侵害受容器」とされ、それを含む問題を総称して筋膜性疼痛症候群と呼ばれています。最近では、エコーの進化によって生理食塩水を注入する医師や筋膜リリースと称した方法でトリガーポイントを使ってアプローチすることがあります。
これには、筋肉それぞれに関連痛を放散する部位が大まかに決まっており、以下は腸骨筋含む腸腰筋のトリガーポイントを図に表しました。見てわかる通り、股関節の前面ほか背部にもその痛みは放散していることがわかります。
理由は様々仮説がありますが、どれもはっきりと結論ずけられたものはありません。
トリガーポイント触診(trigger point palpation) 推奨グレード B トリガーポイントを診断する検査方法の信頼性は確立されておらず,触診によるトリ ガーポイント識別の再現性には,研究の質を改善する必要がある。
胸鎖乳突筋のトリガーポイントは、しばしば頭痛の治療ポイントとして使われる傾向にあり、斜角筋との判別も重要です。斜角筋の場合、胸鎖乳突筋と比べると、おでこ辺りの頭痛と頭頂部辺りの頭痛において有効となる可能性があります。
参考文献
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK532881/#article-32320.s1
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22658700/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4291912/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3940767/