生理学的理解:筋膜の働きと重要性

 

筋膜の生理学的理解


筋膜とは、その名のとおり、筋肉を包む膜のことですが、筋全体を覆っている最外層の筋上膜と、いくつかの筋線維を束ねてそれを覆っている筋周膜、さらには個々の筋線維を包む筋内膜という3種類の筋膜に分けられます。

 


そのなかでも、筋の伸張性に深く関与しているのがもっとも深部に位置する筋内膜であると言われています。

筋膜の主要成分はコラーゲン線維で、それ自体に伸張性はないのですが、網目状に配列することで伸張性を生み出しています。そしてコラーゲンの分子と分子が架橋(クロスブリッジ)と呼ばれる橋かけによって結合されています。


通常、架橋はコラーゲン分子の末端に生成され、成長ともに増加し、ある程度の硬さのコラーゲン線維に成熟します。この架橋は「生理的架橋」と呼ばれますが、これが多いほどコラーゲン線維の伸張性が低下します。これに対し老化ともに生成されるのが「老化架橋」と呼ばれるもので、これは分子の末端ではなく、分子間にランダムに生成されます。歳をとったらからだが硬くなるのは、この「老化架橋」がひとつの要因なのです。また不動によってもコラーゲン線維間のランダムな架橋ができると言われています(藤木大三郎, 1999)。

 

 

 


不動による影響


不動により筋周膜や筋内膜は肥厚することがラットを使った動物実験で認められています(沖田実, 2000)。

こうして筋内結合組織の割合が増え、筋組織が線維化すると伸張性が低下することになります。

さらに長期の不動により、コラーゲン線維の配列の変化が生じ、正常では組織の長軸方向に対して縦走していますが、動かないことにより長軸に対して横走してくることが報告されています(Okita M, 2004)。


痛みなどによる筋スパズムは、ミオシンとアクチン間のクロスブリッジ形成が継続し、血流が低下して不動状態となります。これは筋線維の短縮やコラーゲン分子間の架橋の生成につながり、結果的に筋膜の伸張性が低下すると考えられます。

 

 

 


筋膜の機能


次に、筋膜の機能ですが、筋膜は三次元的に全身に連続した組織であり、膜に強度と形態を与えるコラーゲン線維と形態記憶性と伸張性を与える弾性線維からなり、姿勢と運動をコントロールしています。

 

 


筋膜の機能は、Packaging(包装)、Protection(保護機能)、Posuture(支持
機能)、Passageway(通路)で『4P』と呼ばれています。それぞれ以下のようになります。

 


Packaging
筋膜は身体の全構造を覆う。構造を分けると同時に結び付けている。


Protection
器官を覆い保護している。


Posture
三次元的な筋膜の緊張のバランスで関節のアライメントを決定し姿勢を形づくる。


Passageway
筋膜は神経、動脈、静脈、リンパ管のための通路をつくる。神経系、循環器系の通路であるとともに呼吸器系、消化器系などともつながりを持ち、身体の機能に関わっている。したがって新陳代謝の全プロセスで筋膜は重要な役割を果たす。