痛み(感覚)センサーとしての筋膜の医学的役割

 

 

筋膜は第2の骨格とも言われ、円滑で協調的な身体動作に不可欠な支持組織である。

一方、支持機能以外の生理・解剖学的役割は確立されておらず、筋膜はいわば忘れ去られた組織であった。

 

1)筋膜における侵害受容線維の分布様式を明らかにし、2)筋膜への痛み刺激に応じる細径線維侵害受容器(Aδ線維、C線維)を同定し、3)筋膜からの末梢侵害入力の脊髄投射様式を明らかにしており、筋膜がこれまでに考えられてきたような単なる支持組織ではなく、侵害受容を担う感覚センサー組織として、生体においてよりダイナミックな役割を担うことを示してきた。

 

田口らは、遅発性筋痛の痛覚過敏に重要な機械感作物質である神経成長因子のmRNA発現は、筋のみならず、筋膜においても有意に増大することを示した(2013)。

 

そのことより、遅発性筋痛の痛みの発生源が筋だけでなく、筋膜にもあることを示唆された。


近年、筋膜がアクティブな収縮能を有するという興味深い仮説が報告された。

田口はこの報告に基づき、下腿筋膜が平滑筋様に数十分のオーダーでゆっくりと収縮する現象を確認した。

 

つまり、アクティブな収縮エレメントとしての筋膜の新しい役割についても示唆された。

 

次に、この収縮能が筋膜に分布する血管平滑筋に由来する可能性を確かめるため、トマトレクチンにより下腿筋膜の血管分布を標識した。

 

また、下腿筋膜内の血管平滑筋の分布を調べたところ、下腿筋膜表層に比較的大きな血管の密な分布が観察され、その血管の走行パターンから下腿筋膜の長軸方向への収縮が下腿筋膜表層に分布する血管平滑筋に起因する可能性が示唆された。