カカオポリフェノールは、活性酸素を抑え生活習慣病の予防に有効

カカオ豆を原料とするチョコレートやココアには、カカオポリフェノールがふんだんに含まれます。カカオポリフェノールは、活性酸素を抑え生活習慣病の予防に有効であると以前から世界的に考えられてきましたが、それを証明する実験が日本でも行われました。

 

愛知学院大学の大澤俊彦教授は、愛知県蒲郡市、製菓会社の明治と共同で、蒲郡市内外に住む45~69歳の347名(男性123名、女性224名)を対象とする研究に取り組みました。

 

対象者に、カカオポリフェノールを多く含むチョコレート(カカオ72%)を一日25gずつ4週間摂取してもらい、蒲郡市民病院で検査しながら体の変化を観察するという研究です。

 

その結果は、大変に興味深いものでした。 「脳の疲れを癒やし、機能を改善する」との報告 この研究では、被験者にアンケート調査を行っており、チョコレートの摂取で、精神的にも肉体的にも活動的になることが報告されたのです。

 

その多くは、チョコレートを摂取している期間中、全体的な健康状態は非常に良く、いつも活力に溢れていたと答えています。楽しくおだやかな気持ちで、落ち着いて過ごせたとも言っています。

 

しかも、実験前と実験後で体重やBMIの変化はなかった、つまり太ることはなかったそうです。

 

ほかにも、この研究では、主に「脳」と「血管系」に関する健康効果が証明されました。いずれも全身の状態を左右する要素であり、疲れにくい体をつくることに繫がります。

 

脳については、チョコレートの摂取(4週間後) で、脳にとっての重要な栄養分「BDNF(脳由来神経栄養因子)」の血中濃度が上昇することが報告されています(別掲図参照)。

 

BDNFは、ニューロン神経細胞)の産生や神経突起の伸長促進、神経伝達物質の合成促進に関連するなど、脳にとって重要な働きをする栄養分です。

 

アルツハイマー病や、記憶・学習など認知機能との関連性も報告されており、65歳を過ぎた頃から加齢と共に減少する傾向にあります。

 

これまでBDNFは、運動したり難しい問題を考えたりすることで増えるのではないかと言われてきました。ところが、意外なことに、チョコレートやココアに含まれるカカオポリフェノールにより増える可能性があることが明らかになったのです。

 

なお、カカオポリフェノールを摂取すると、脳血流量が増えることもわかっています。脳血流量が増えることで、認知機能テストのスコアが上昇することも報告されています。

 

これらのことから、カカオ分の高いチョコレートは、とくに脳の疲れを癒し、機能を改善する食べ物であると言えるでしょう。

 

このほか、同研究では、チョコレートの摂取による動脈硬化リスクや高血圧リスクの低下、さらに、善玉コレステロールの増加と強力な酸化抑制効果も報告されました。

 

347名の日本人を対象に進められたこの研究は、チョコレートの素晴らしい効果を示すものです。 「カカオ成分72%以上を一日25g」で好結果

 

ただし、チョコレートならなんでもいい、いくらでも食べていいというわけではありません。

 

実は、ヨーロッパでは、カカオポリフェノールが含まれないホワイトチョコレートと通常のチョコレートを食べ比べ、健康効果を調べる実験が行われたことがあります。

 

この実験でも、カカオポリフェノールが含まれる通常のチョコレートのほうにメリットが見られましたが、一日の摂取量が100グラムと多かったために、過剰摂取の問題も指摘されました。

 

一方、今回紹介した日本人対象の研究では、「カカオ成分が72%以上のチョコレートを一日25g」で行い、非常にいい結果を得ています。

 

これは、とても重要な基準となります。ちなみに、私が“ミラクルフード”として推奨するのは、砂糖が少なくてカカオ成分が80%以上のものです。

 

こうした製品には、ポリフェノールがたくさん含まれており、その含有率は赤ワインの10倍にものぼります。そんな良質のチョコレートを、一日25グラム食べることを習慣にするといいでしょう。

 

※牧田善二著『疲れない体をつくる最高の食事術』より抜粋して再構成