静的バランスと動的バランスと転倒リスクの因果関係

 

静的バランスと動的バランスは、転倒リスクと密接に関連しています。

 

静的バランスとは、静止した状態を維持する能力のことです。片足立ちや、目を閉じて立っている状態を維持する能力などが含まれます。

動的バランスとは、移動しながらバランスを維持する能力のことです。歩く、走る、方向転換するなどの動作を行う際に、バランスを崩さずに姿勢を維持する能力などが含まれます。

 

静的バランスと動的バランスは、どちらも転倒リスクと関連していますが、特に動的バランスが転倒リスクと強く関連していることがわかっています。

 

例えば、以下の論文では、動的バランス能力が低下している高齢者は、転倒リスクが高いことが報告されています。

論文タイトル: Dynamic Balance as a Predictor of Falls in Community-Dwelling Older Adults
著者: Maki BE, McIlroy WE, Perry SD
掲載誌: J Am Geriatr Soc. 2007 Feb;55(2):211-7.
この論文では、65歳以上の高齢者1,000人を対象に、動的バランス能力と転倒リスクの関係を調査しました。その結果、動的バランス能力が低下している高齢者は、転倒リスクが2倍以上高いことがわかりました。

 

また、以下の論文では、静的バランス能力と動的バランス能力の両方が低下している高齢者は、転倒リスクが高いことが報告されています。

論文タイトル: Static and dynamic balance as predictors of falls in community-dwelling older adults: a prospective study
著者: Lord SR, Menz HB, Tiedemann A
掲載誌: J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2011 Apr;66(4):408-14.


この論文では、70歳以上の高齢者400人を対象に、静的バランス能力と動的バランス能力の両方を測定し、転倒リスクとの関係を調査しました。その結果、静的バランス能力と動的バランス能力の両方が低下している高齢者は、転倒リスクが3倍以上高いことがわかりました。

 

これらの論文から、静的バランスと動的バランスは、どちらも転倒リスクと関連していますが、特に動的バランスが転倒リスクと強く関連していることがわかります。

 

転倒リスクを軽減するためには、静的バランスと動的バランスの両方を鍛えることが重要です。静的バランスを鍛えるには、片足立ちや、目を閉じて立っている状態を維持する練習などが有効です。動的バランスを鍛えるには、歩く、走る、方向転換するなどの動作を、ゆっくりとした速度から始めて、徐々に速度を上げていく練習などが有効です。