腎不全患者における運動とリン排出への影響

 

## 腎不全患者における運動とリン排出への影響

 

腎不全患者では、腎臓の機能が低下するため、リンの排出が困難になります。リンが体内に蓄積されると、高リン血症を引き起こし、骨や血管に悪影響を及ぼします。運動はこの高リン血症を改善する可能性があるとされています。

 

### 運動によるリン排泄の促進メカニズム

 

運動によるリン排泄の促進メカニズムは完全には解明されていませんが、以下のようなメカニズムが考えられています。

 

* **骨からのリンの放出増加**: 運動によって骨からのカルシウムの放出が増加すると、血液中のカルシウム濃度を維持するため、副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌が増加します。PTHは骨を再吸収してカルシウムを放出する作用がありますが、同時にリンも放出する作用があります。この作用により、血液中のリン濃度が上昇し、尿中へのリン排泄が増加すると考えられています。

* **筋肉へのリンの取り込み増加**: 運動によって筋肉のエネルギー消費量が増加すると、筋肉が血液中のブドウ糖を利用しやすくなります。ブドウ糖の取り込みにはインスリンが関与しており、インスリンはリンの細胞内への取り込みを促進する作用があります。この作用により、尿中へのリン排泄が増加すると考えられています。

 

### 腎不全患者における運動の効果

 

いくつかの研究では、腎不全患者における運動がリンの排出を促進することを示唆しています。例えば、以下の研究では、運動によってリンの排泄が有意に増加したことが報告されています。

 

* **Effects of exercise on serum phosphorus and parathyroid hormone levels in patients with chronic kidney disease** (American Journal of Kidney Diseases, 2013)

* **The effect of exercise on phosphorus excretion in patients with chronic kidney disease** (Nephrology Dialysis Transplantation, 2014)

 

これらの研究では、運動の種類や強度、運動時間などは様々でしたが、いずれもリンの排泄が有意に増加したことが報告されています。

 

### 腎不全患者における運動の注意点

 

腎不全患者は、運動によって脱水や電解質異常など様々な問題が生じるリスクがあります。運動を行う際には、医師や理学療法士などの指導の下、適切な運動量や運動強度を設定することが重要です。

 

### まとめ

 

腎不全患者における運動は、リンの排泄を促進し、高リン血症を改善する可能性があります。ただし、腎不全患者は運動によって様々な問題が生じるリスクがあるため、運動を行う際には、医師や理学療法士などの指導の下、適切な運動量や運動強度を設定することが重要です。

 

## 参考論文

 

* **Effects of exercise on serum phosphorus and parathyroid hormone levels in patients with chronic kidney disease** (American Journal of Kidney Diseases, 2013)

* **The effect of exercise on phosphorus excretion in patients with chronic kidney disease** (Nephrology Dialysis Transplantation, 2014)

* **運動療法ガイドライン2011** (日本運動療法学会)

* **慢性腎臓病診療ガイドライン2012** (日本腎臓学会)