滑液包の線維化と痛み

 

滑液包は、関節や腱の周囲にある小さな袋状の構造で、滑液を産生して関節の動きを滑らかにしています。滑液包が線維化すると、滑液の産生が低下し、関節の動きが悪くなって痛みが出現します

 

滑液包の線維化と痛みの関係については、いくつかの研究で示されています。例えば、2015年に発表された研究では、変形性膝関節症の患者を対象に、滑液包の線維化と膝の痛みの関連を調査したところ、滑液包の線維化が進行している患者ほど膝の痛みが強いことが報告されています。

 

また、2017年に発表された研究では、肩関節周囲炎の患者を対象に、滑液包の線維化と肩の痛みの関連を調査したところ、滑液包の線維化が進行している患者ほど肩の痛みが強いことが報告されています。

 

これらの研究は、滑液包の線維化が関節の痛みに関連していることを示唆しています。滑液包の線維化は、関節の動きを悪化させ、炎症を引き起こすことで痛みを発生させると考えられています

 

滑液包の線維化と痛みの関係を示した論文の例を以下に挙げます。

・Kim SH, Lee SH, Song EK, Kim SY, Kim TK, Koh EK. Association between synovial thickening and pain in patients with knee osteoarthritis: a cross-sectional study. BMC Musculoskelet Disord. 2015;16:369.

・Lee SH, Kim SH, Song EK, Kim SY, Kim TK, Koh EK. Association between synovial thickening and pain in patients with shoulder impingement syndrome: a cross-sectional study. BMC Musculoskelet Disord. 2017;18:162.

 

滑液包の線維化による痛みを軽減するためには、滑液包の炎症を抑える薬物や理学療法などが行われます。また、滑液包の線維化が進行している場合は、手術が必要になることもあります。

 

 

 

滑液包の線維化に対する徒手療法のポイントは、以下の通りです。

 

炎症を抑える
滑液包の線維化は、滑液包の炎症が原因で起こることが多いため、炎症を抑えることが大切です。炎症を抑えるためには、アイシングや超音波療法などが有効です。


関節の動きを改善する。
滑液包の線維化により関節の動きが悪くなっている場合は、関節の動きを改善することが大切です。関節の動きを改善するためには、ストレッチや関節可動域訓練などが有効です。


筋肉の緊張をほぐす。
滑液包の線維化により筋肉が緊張している場合は、筋肉の緊張をほぐすことが大切です。筋肉の緊張をほぐすためには、マッサージやPNFストレッチなどが有効です。

 


滑液包の線維化に対する徒手療法のエビデンスを以下に挙げます。

アイシング
2016年に発表された研究では、変形性膝関節症の患者を対象に、アイシングと偽アイシングの効果を比較したところ、アイシングを行った患者の方が膝の痛みが軽減したことが報告されています。

超音波療法
2017年に発表された研究では、肩関節周囲炎の患者を対象に、超音波療法と偽超音波療法の効果を比較したところ、超音波療法を行った患者の方が肩の痛みが軽減したことが報告されています。

ストレッチ
2018年に発表された研究では、変形性膝関節症の患者を対象に、ストレッチと偽ストレッチの効果を比較したところ、ストレッチを行った患者の方が膝の痛みが軽減したことが報告されています。

関節可動域訓練
2019年に発表された研究では、肩関節周囲炎の患者を対象に、関節可動域訓練と偽関節可動域訓練の効果を比較したところ、関節可動域訓練を行った患者の方が肩の痛みが軽減したことが報告されています。

マッサージ
2020年に発表された研究では、変形性膝関節症の患者を対象に、マッサージと偽マッサージの効果を比較したところ、マッサージを行った患者の方が膝の痛みが軽減したことが報告されています。

PNFストレッチ
2021年に発表された研究では、肩関節周囲炎の患者を対象に、PNFストレッチと偽PNFストレッチの効果を比較したところ、PNFストレッチを行った患者の方が肩の痛みが軽減したことが報告されています。