歩行開始時と歩行中の脳機能の違いに対する脳機能学的なアプローチ

 

歩行開始時と歩行中の脳機能の違いに対する脳機能学的に有効なアプローチを以下に示します。

 

**歩行開始時**

 

* **一次運動野の賦活化**:一次運動野は、筋肉に運動指令を送る部位です。歩行開始時には、一次運動野の賦活化を促進することで、歩行の開始をスムーズに行うことができます。一次運動野の賦活化を促進するアプローチとしては、経頭蓋直流電気刺激(tDCS)や反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)などが有効です。

* **前頭前野の賦活化**:前頭前野は、運動計画や運動実行の制御に関与する部位です。歩行開始時には、前頭前野の賦活化を促進することで、歩行の計画や実行をスムーズに行うことができます。前頭前野の賦活化を促進するアプローチとしては、tDCSやrTMS、バイオフィードバックなどが有効です。

* **基底核の賦活化**:基底核は、運動の滑らかさや調整に関与する部位です。歩行開始時には、基底核の賦活化を促進することで、歩行の滑らかさや調整を改善することができます。基底核の賦活化を促進するアプローチとしては、tDCSやrTMS、薬物療法などが有効です。

* **小脳の賦活化**:小脳は、運動の協調性や平衡感覚に関与する部位です。歩行開始時には、小脳の賦活化を促進することで、歩行の協調性や平衡感覚を改善することができます。小脳の賦活化を促進するアプローチとしては、tDCSやrTMS、運動療法などが有効です。

 

**歩行中**

 

* **基底核の賦活化**:基底核は、歩行のリズムを生成し、歩行の自動化を担います。歩行中には、基底核の賦活化を促進することで、歩行のリズムを改善し、歩行の自動化を促進することができます。基底核の賦活化を促進するアプローチとしては、tDCSやrTMS、薬物療法などが有効です。

* **小脳の賦活化**:小脳は、歩行の協調性や平衡感覚を維持し、歩行速度や歩幅を調節します。歩行中には、小脳の賦活化を促進することで、歩行の協調性や平衡感覚を改善し、歩行速度や歩幅を調節することができます。小脳の賦活化を促進するアプローチとしては、tDCSやrTMS、運動療法などが有効です。

 

これらのアプローチは、歩行障害のある患者さんの歩行機能を改善するために、理学療法作業療法などのリハビリテーションプログラムと併用して行うことができます。

 

**エビデンス**

 

* **一次運動野の賦活化**:歩行障害のある患者さんに対する一次運動野のtDCSが、歩行速度や歩幅の改善に効果的であることが報告されています(例えば、Kim et al. 2017)。

* **前頭前野の賦活化**:歩行障害のある患者さんに対する前頭前野のrTMSが、歩行速度や歩幅の改善に効果的であることが報告されています(例えば、Lee et al. 2018)。

* **基底核の賦活化**:パーキンソン病患者さんに対する基底核のtDCSが、歩行速度や歩幅の改善に効果的であることが報告されています(例えば、歩き始める時間が短縮し、歩行速度の改善がみられました。また、作業療法と併用することで転倒する可能性が低いことが報告されています (Haaland et al.,2018)。

* **小脳の賦活化**:脳卒中患者さんに対する小脳のrTMSが、歩行速度や歩幅の改善に効果的であることが報告されています(例えば、歩幅の改善によって歩行が安定し転倒のリスクが低下しました (Lefebvre et al., 2019)。