# 踵骨の内反偏移が立位時や歩行時の重心偏移に与える影響
## 踵骨の内反と重心位置の関係
踵骨の内反角度が重心位置に与える影響について、提供された研究結果から以下のように整理できます。
### 立位時の影響
踵骨傾斜角と膝関節屈曲角度には有意な負の相関関係(r=-0.83, p<0.05)が認められています[1]。これは踵骨の内反が大きいほど、前方への重心移動時に膝関節がより屈曲位をとる傾向があることを示しています。
踵骨の内反は下肢の運動連鎖に影響を与え、以下のような変化を生じさせます:
- 下腿の相対的な内旋位をもたらす
- 膝関節が軽度屈曲位での姿勢保持となる
- 大腿四頭筋などの筋性支持への依存度が高まる[1]
これらの変化により、踵骨内反は立位時の重心位置を相対的に後方に偏移させる傾向があります。
### 歩行時の影響
踵骨傾斜角の内反群は外反群と比較して、立脚中期後半で足圧中心(COP)が外側に偏位する傾向があります[6]。これは踵骨内反が距骨下関節の回外運動と連動し、横足根関節の動きに影響を与えるためです。
## 踵骨外反との比較による数値的考察
踵骨の内反と外反を比較することで、内反の影響をより明確に理解できます:
1. **後足部外反角度変化とCOP位置の関係**:
後足部外反角度の増大とCOP位置の前方移動には高い正の相関(r=0.91)が認められています[8]。この関係を逆に考えると、踵骨内反は重心を後方に偏移させる傾向があると推測できます。
2. **踵骨内反角の計算式**:
距骨傾斜角 = -15.708 + 踵骨内反角 × 0.361 + 内返し距離 × 0.289 + 下腿外旋可動域 × 係数[5]
この式から、踵骨内反角が1度増加すると、距骨傾斜角が約0.361度変化することがわかります。
3. **傾斜板による実験結果**:
傾斜板を用いた研究では、踵骨外反が増加すると重心が前方に移動することが示されています[2]。これを踵骨内反に置き換えると、内反角度の増加に伴い重心は後方に移動する傾向があると考えられます。
## 臨床的意義
踵骨内反の重心偏移への影響は、以下の臨床場面で重要な意味を持ちます:
1. **姿勢制御機能への影響**:
踵骨内反は足関節による姿勢制御機能に影響を与え、特に前後方向の重心制御に関与します[8][11]。
2. **歩行パターンへの影響**:
踵骨内反は歩行時の推進機能に影響を与え、特に立脚中期以降の重心移動パターンを変化させます[6][8]。
3. **下肢関節へのメカニカルストレス**:
踵骨内反による重心位置の変化は、下肢関節全体のメカニカルストレスに影響を与えます[8]。特に膝関節への負荷分布が変化する可能性があります[7]。
## まとめ
踵骨の内反偏移は立位時および歩行時の重心位置に以下のような影響を与えます:
1. 立位時:重心が後方に偏移する傾向がある
2. 歩行時:立脚中期後半でCOPが外側に偏位する傾向がある
3. 下肢の運動連鎖:下腿の内旋、膝関節屈曲位での姿勢保持を促進する
これらの知見は、足部アライメント評価や下肢関節疾患に対するリハビリテーションにおいて重要な指標となります。特に、踵骨内反角度の評価と修正は、重心制御の改善や下肢関節へのメカニカルストレス軽減に寄与する可能性があります。
[1] https://cir.nii.ac.jp/crid/1390001205564970496
[2] https://cir.nii.ac.jp/crid/1390282679623253760
[3] https://kenkyuukai.m3.com/journal/FilePreview_Journal.asp?path=sys%5Cjournal%5C20161111180358%2DBCE5E8AE76B5CF89A63D075399A7C9944A06120F6589A5EFCA8A336027A4B9C4%2Epdf&sid=1363&id=2341&sub_id=38612&cid=471
[4] https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/33/3/33_379/_pdf
[5] https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/41/8/41_KJ00009647387/_pdf
[6] https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2009/0/2009_0_A4P1029/_article/-char/ja/
[7] https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/31633/files/24351
[8] https://confit.atlas.jp/guide/event/jpta49/subject/1085/detail?lang=ja
[9] https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/29/3/29_431/_pdf
[10] https://cir.nii.ac.jp/crid/1390282680551231616
[11] https://confit.atlas.jp/guide/event/jpta49/subject/1085/detail
[12] https://cir.nii.ac.jp/crid/1390001205576667904
[13] https://www.jspt.or.jp/eibun/2012/1204_1.html
[14] https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/26/6/26_6_747/_pdf