低負荷高速トレーニングの筋機能向上に関するエビデンス

## 低負荷高速トレーニングの筋機能向上に関するエビデンス

 

低負荷での高速トレーニング(Low-Load High-Velocity Training, LLHV)は、筋機能の向上において有効であるとする研究が増えてきています。以下に、関連する米国の研究から得られたエビデンスを詳しくまとめます。

 

**1. 筋力と機能的能力の向上**

2017年の研究では、低負荷高速トレーニングが2型糖尿病患者において筋力、パワー出力、機能的能力を改善することが示されました。この研究では、参加者が6週間にわたり、50-60%の1RMでの低負荷高速トレーニングを行った結果、膝伸展のピークトルクが有意に増加し、機能的テストでも改善が見られました[3]。特に、筋力の発揮速度が重要であることが強調され、筋力よりもパワーが日常生活の機能において重要な指標であることが示されています。

 

**2. 神経適応の促進**

低負荷高速トレーニングは、神経系の適応を促進することが知られています。具体的には、運動神経の発火頻度が増加し、運動単位の動員が効率的に行われるようになります。これにより、筋肉の収縮がより迅速かつ強力に行われるようになります[4]。特に、筋力トレーニングを行う際に、高速での運動は神経系の適応を最大化するために重要です。

 

**3. 筋肥大と筋機能の改善**

低負荷でのトレーニングは、筋肥大においても有効であることが示されています。2020年のメタアナリシスでは、低負荷トレーニングが高負荷トレーニングと同様の筋肥大を引き起こす可能性があることが報告されています[2]。特に、トレーニングが筋肉の疲労に近い状態で行われる場合、低負荷でも十分な筋機能の向上が期待できるとされています。

 

**4. 高速トレーニングの実践的な利点**

- **機能的パフォーマンスの向上**:

高速トレーニングは、日常生活における動作能力を向上させることが示されています。特に高齢者においては、転倒リスクを低下させる効果が期待されています[3]。

 

- **筋力とパワーの向上**:

高速トレーニングは、筋力だけでなく筋パワーの向上にも寄与します。これは、筋肉の収縮速度を高めることで、より効率的な運動が可能になるためです[4]。

 

**結論**

低負荷での高速トレーニングは、筋機能の向上において有効であることが多くの研究から示されています。筋力やパワーの向上、神経適応の促進、さらには日常生活における機能的能力の改善が期待できるため、特に高齢者や運動不足の人々にとって有益なトレーニング方法といえるでしょう。したがって、筋トレにおいて低負荷高速トレーニングを取り入れることは、効果的なアプローチとなります。


[1] https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1440244014001443
[2] https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7706639/
[3] https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5505086/
[4] https://www.physio-pedia.com/Strength_Training_versus_Power_Training
[5] https://journals.lww.com/acsm-essr/fulltext/2021/01000/strength_training__in_search_of_optimal_strategies.2.aspx
[6] https://www.nature.com/articles/s41598-024-79506-9
[7] https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/48/1/48_1_51/_pdf
[8] https://sportsmedicine-open.springeropen.com/articles/10.1186/s40798-023-00578-4
[9] https://www.researchgate.net/publication/263747016_High-Speed_Resistance_Training_is_More_Effective_than_Low-Speed_Resistance_Training_to_Increase_Functional_Capacity_and_Muscle_Performance_in_Older_Women
[10] https://www.mdpi.com/2075-4663/9/2/32
[11] https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8126497/
[12] https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0197457222002506
[13] https://www.frontiersin.org/journals/physiology/articles/10.3389/fphys.2022.926972/full
[14] https://www.mdpi.com/1422-0067/24/23/17079
[15] https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25853914/
[16] https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2095254623000601
[17] https://link.springer.com/article/10.1007/s40279-024-02110-4
[18] https://link.springer.com/article/10.1007/s40279-023-01978-y