パーキンソン症候群の治療において、レボドパ以外にも様々な薬剤や治療法が存在します。これらは症状の改善や進行の抑制を目的として使用されます。
ドパミンアゴニスト
ドパミンアゴニストは、脳内のドパミン受容体に直接作用し、ドパミンの不足を補う薬剤です。主に麦角系(ブロモクリプチン、カベルゴリン)と非麦角系(プラミペキソール、ロピニロール)があります。これらは特に初期のパーキンソン病患者に効果的で、レボドパとの併用で運動症状の改善が期待できます1112。ただし、吐き気や食欲低下、下肢のむくみなどの副作用があり、特に高齢者や認知症を伴う患者には慎重に使用する必要があります1315。
MAO-B阻害薬
MAO-B阻害薬は、モノアミン酸化酵素B(MAO-B)を阻害することで脳内のドパミン濃度を増加させる薬剤です。主にセレギリン、ラサギリン、サフィナミドがあります。これらは初期治療やレボドパの「ウェアリングオフ現象」への対応に有効です1718。また、神経細胞死を予防する可能性があり、進行抑制効果も期待されていますが、まだ結論は出ていません1719。
新規治療薬
イストラデフィリン(ノウリアスト)
イストラデフィリンは選択的なMAO-B阻害剤で、特にレボドパ治療による効果が不十分な患者に使用されます。臨床試験では、「オフ時間」の短縮に効果的であることが示されています4。
ゾニサミド(トレリーフ)
ゾニサミドは抗てんかん薬としても知られていますが、パーキンソン病の治療にも使用されます。ドパミン受容体に作用し、神経伝達物質のバランスを調整することで運動症状を改善します。特に「ウェアリングオフ」現象の軽減に用いられます4。
ND0612
ND0612は、レボドパとカルビドパを液剤化し、持続的皮下投与する新しい治療法です。経口投与による血中濃度の変動を抑え、より安定した効果を提供することを目的としています。最近の臨床試験では、運動症状の日内変動を有意に改善することが示されています15。
非薬物療法
薬物療法以外にも、リハビリテーション、教育、カウンセリング、生活指導、食事指導などの非薬物療法が重要です。特に運動療法は筋力や柔軟性の維持に効果的です2123。また、深部脳刺激(DBS)などの手術療法も重度の運動症状に対して効果的な選択肢となっています2224。
代替療法
最近では、腸内細菌叢移植療法(FMT)や鍼治療、音楽療法なども注目されています。これらは従来の治療法と併用することで、患者の生活の質を向上させる可能性があります679。
パーキンソン症候群の治療は、個々の患者の症状や状態に応じて、これらの治療法を適切に組み合わせることが重要です。常に最新の研究成果を踏まえ、医師と相談しながら最適な治療計画を立てることが推奨されます。