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「肩こり」に相当する頚部・肩甲帯の筋骨格トラブルは、めまい・ふらつきとかなり高率に併存する

いわゆる「肩こり」に相当する頚部・肩甲帯の筋骨格トラブルは、めまい・ふらつきとかなり高率に併存し、症状を悪化させる可能性は高いと考えられます。ただし「肩こり=めまいの唯一の原因」とまでは言えず、あくまで増悪因子・維持因子という位置づけが妥当です。pmc.ncbi.nlm.nih+2

1. めまい患者における首・肩の痛みの頻度

長期のめまい患者150例を1年間追跡した研究では、頚部・肩を含む筋骨格系疼痛の併存率は非常に高く、痛みの部位数が多い人ほどめまいの自覚的ハンディキャップ(DHIスコア)が有意に高くなっていました(p<0.001)。 別の横断研究(n=150)では、長期のめまい患者の約70〜80%が頚部・肩甲帯などの筋骨格痛を訴え、痛みの強さとめまいの重症度スコア(Vertigo Symptom Scale など)に中等度の正の相関が認められています。 めまい患者全体を対象にした系統的レビューでも、筋骨格痛の有病率は50〜80%と報告され、首・肩痛が最も頻度の高い部位のひとつでした。pmc.ncbi.nlm.nih+2

2. 肩こりを含む頚部筋骨格異常と「頚性めまい」

頚性めまい(cervicogenic dizziness)は、頚部痛・可動域制限・筋緊張異常を背景に、頚椎・上位頚椎周囲の固有感覚入力の乱れが、前庭系・視覚との統合を歪めてめまい感を生じると説明されています。

ある研究では、メニエール病・BPPV・頚性めまいの患者132例を調査したところ、頚部や肩の筋の緊張・圧痛・左右差など「首・肩こり」に相当する所見が、メニエール病で約80%、BPPVで約70%、頚性めまいではさらに高率に認められたと報告されています。 また、変性頚椎症患者を対象にした前向き研究では、頚椎回旋により椎骨動脈血流速度が有意に変化し、めまい症状と関連していたことから、頚椎変性と筋緊張の組み合わせが血流・固有感覚の両面でめまいに関与しうると示唆されています。pmc.ncbi.nlm.nih+1

3. 肩こり改善がめまいに及ぼす影響(介入研究)

前方頭位姿勢(FHP)、頚部痛、めまいを同時に扱った6週間の多面的理学療法プログラム(頚部・肩甲帯の筋力・ストレッチ、姿勢矯正、前庭リハ併用)では、

  • FHP(頭部前方変位角)が有意に改善し、

  • 頚部痛スコアが有意に低下、

  • めまいの重症度スコア(DHI等)も統計学的に有意に改善
    したと報告されています(p<0.001)。 むち打ち関連障害患者172例を1年間追跡した研究では、頚部筋機能(筋力・持久力・位置覚など)が悪い群ほど、12か月時点でもめまい症状が残存しやすく、心理要因を補正してもこの関連は有意でした。 これらは、「首〜肩こりを含む頚部筋骨格機能を改善することで、めまい症状も軽減しうる」ことを示す間接的エビデンスといえます。pmc.ncbi.nlm.nih+2

4. 肩こり(首・肩筋緊張)とめまいの病態的つながり

  • 感覚入力の乱れ
    頚椎およびその周囲筋・靭帯からの固有感覚は、前庭核・小脳と統合されて姿勢と眼球運動を制御しており、慢性的な筋緊張やトリガーポイントは、この入力パターンを変化させる可能性があります。pmc.ncbi.nlm.nih+1

  • 痛みと注意・不安
    前述の縦断研究では、痛みの部位数・強さが多いほど1年後のめまいアウトカムが悪く、その一部は不安・抑うつが媒介していることが示されています。pmc.ncbi.nlm.nih

  • 姿勢変化
    スマホ・PC使用などで前方頭位+円背姿勢が続くと、僧帽筋上部・肩甲挙筋・肩甲帯周囲の筋硬度や筋活動パターンが変わることが報告されており、こうした姿勢は頚椎への負荷増大と頚性めまいリスクの背景になりうると考えられます。biorxiv+1

このように、いわゆる「肩こり(首〜肩甲帯の筋緊張・痛み・姿勢不良)」は、前庭系単独では説明しきれないめまい・不安定感を誘発または増悪させる可能性があり、その意味で「肩こりからめまい症状が起こる・悪くなる」ことは、統計的にも臨床的にも十分あり得るといえます。pmc.ncbi.nlm.nih+2

5. 臨床的なまとめ

  • めまい患者の50〜80%で首・肩の痛み・こりが併存しており、痛みが多いほどめまいの重症度・予後が悪化する。pmc.ncbi.nlm.nih+2

  • 頚性めまい・前庭疾患でも、80%前後で頚部・肩の筋緊張や姿勢異常がみられ、「肩こり」を含む頚部筋骨格因子が病態に関与している可能性が高い。pmc.ncbi.nlm.nih+1

  • 頚部・肩甲帯の筋機能改善・姿勢矯正・筋骨格リハビリを前庭リハと組み合わせると、6週間程度でもめまいスコアの有意な改善が報告されている。cureus+2

したがって、「肩こりからめまい症状が起こる・強くなる可能性はある」と考えるのが最新知見に沿った解釈であり、めまい患者では肩こりを単なる付随症状ではなく、治療ターゲットのひとつとして評価・介入することが推奨されます。

  1. https://medicaljournalssweden.se/jrm/article/view/44075
  2. http://biorxiv.org/lookup/doi/10.1101/2024.06.27.600991
  3. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jor.20631
  4. https://journals.lww.com/10.4103/joasis.joasis_3_25
  5. https://www.semanticscholar.org/paper/c94f389d720ca192b4be0aaaeb8da7b72d17f04e
  6. https://dx.plos.org/10.1371/journal.pone.0234359
  7. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jor.24482
  8. https://journalgrid.com/view/article/rjpt/12434295
  9. http://koreascience.or.kr/journal/view.jsp?kj=DHTHB4&py=2020&vnc=v8n3&sp=11
  10. https://www.semanticscholar.org/paper/061d85526a62dc62349e993b85fdf91b0cbda10f
  11. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11997662/
  12. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8811398/
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  14. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8163930/
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  16. https://www.cureus.com/articles/269322-effectiveness-of-a-six-week-multimodal-physiotherapy-program-on-the-interconnected-nature-of-forward-head-posture-vertigo-and-neck-pain
  17. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11877634/
  18. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10416587/
  19. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9286866/
  20. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9290277/