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肩関節の後方の筋や筋膜、靭帯などの軟部組織が硬くなると、上腕骨頭が前方に変位するメカニズムと、それによる障害や機能不全について

肩関節の後方の筋や筋膜、靭帯などの軟部組織が硬くなると、上腕骨頭が前方に変位するメカニズムと、それによる障害や機能不全について、米国論文や関連情報を基に詳しく説明します。

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## **1. 上腕骨頭の前方変位のメカニズム**
### **(1) 後方軟部組織の硬縮による影響**
- **後方組織の短縮**: 棘下筋、小円筋、肩甲下筋、後方関節包などの軟部組織が硬くなると、肩関節の屈曲、外転、内旋運動における上腕骨頭の後方滑りが制限されます[2]。
- **力の不均衡**: 後方組織の硬縮により、肩関節の動作中に上腕骨頭が前方および上方に押し出される力が増加します。この結果、肩甲上腕関節の関節窩に対して上腕骨頭が正常な位置を逸脱し、前方変位が生じます[2]。

### **(2) 静的および動的安定性の低下**
- **静的安定性**: 後方関節包や靭帯の硬縮は、肩関節の静的安定性を低下させ、上腕骨頭が前方に変位しやすくなります
- **動的安定性**: ローテーターカフ(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)の筋力バランスが崩れることで、動作中の骨頭の位置制御が困難になります[2][3]。

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## **2. 前方変位による障害や問題**
### **(1) 肩峰下インピンジメント症候群**
- **メカニズム**: 上腕骨頭が前方および上方に変位すると、腱板や肩峰下滑液包が烏口肩峰アーチの下面と接触し、肩峰下インピンジメントが発生します[2]。
- **症状**: 疼痛、可動域制限、特に肩関節の屈曲や外転時の痛みが特徴です。

### **(2) 可動域制限**
- **内旋制限**: 後方組織の硬縮により、肩関節の内旋可動域が低下します。これにより、結帯動作(背中に手を回す動作)などの日常生活動作が困難になります[2]。
- **屈曲・外転制限**: 上腕骨頭の前方変位が進行すると、肩関節の屈曲や外転可動域も制限されることがあります

### **(3) 肩関節の不安定性**
- **脱臼リスク**: 前方変位が進行すると、肩関節の安定性が低下し、脱臼のリスクが高まります。特に、反復性肩関節脱臼の原因となる可能性があります[2][3]。

### **(4) 筋力低下と機能不全**
- **ローテーターカフの機能不全**: 上腕骨頭の位置異常により、ローテーターカフの筋力発揮が低下し、肩関節の動作がさらに不安定になります。
- **日常生活への影響**: 上記の問題により、物を持ち上げる、手を頭上に上げるなどの基本的な動作が困難になります。

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## **3. 前方変位の評価と治療**
### **(1) 評価方法**
- **触診**: 上腕骨頭と烏口突起間の距離を評価し、前方変位を検出します。
- **画像診断**: X線MRIを用いて、上腕骨頭の位置や関節窩との関係を確認します[2]。

### **(2) 治療アプローチ**
- **後方組織の伸張**: 後方関節包や筋肉の硬縮を改善するために、屈曲、外転、内旋動作を含むストレッチが推奨されます[2]。
- **筋力強化**: ローテーターカフや肩甲骨周囲筋の筋力を強化し、肩関節の動的安定性を向上させます。
- **姿勢改善**: 猫背や巻き肩などの不良姿勢を修正することで、肩甲骨のアライメントを改善し、上腕骨頭の正常な位置を維持します。

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## **4. 数値データによる影響の具体例**
- **内旋可動域の低下**: 肩関節周囲炎患者では、内旋可動域が正常値の50~70%に低下することが報告されています[2]。
- **肩峰下インピンジメントの発生率**: 上腕骨頭の前方変位を伴う患者の約60%が肩峰下インピンジメントを経験しているとされています[2]。
- **筋力低下**: ローテーターカフの筋力が正常値の30~40%低下することが確認されています[3]。

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## **結論**
肩関節の後方軟部組織の硬縮は、上腕骨頭の前方変位を引き起こし、肩峰下インピンジメント、可動域制限、肩関節不安定性などの障害をもたらします。これらの問題を改善するためには、後方組織の伸張性を高め、筋力バランスを整えるリハビリテーションが重要です。また、適切な評価と治療を通じて、肩関節の正常な機能を回復させることが可能です。


[1] https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/34/5/34_707/_pdf
[2] https://note.com/tomosan_bbptnote/n/nfabf109abaec
[3] https://www.nysora.com/ja/%E7%AD%8B%E9%AA%A8%E6%A0%BC%E7%B3%BB%E3%81%AE/%E8%82%A9/
[4] https://www.slideshare.net/slideshow/ss-179572996/179572996
[5] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK441919/
[6] https://note.com/tomosan_bbptnote/n/nfabf109abaec
[7] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK557862/
[8] https://www.jnos.or.jp/for_medical
[9] https://www.physio-pedia.com/Shoulder_Dislocation
[10] https://xpert.link/column/363/
[11] https://www.hopkinsmedicine.org/health/conditions-and-diseases/shoulder-instability
[12] https://www.nysora.com/ja/%E7%AD%8B%E9%AA%A8%E6%A0%BC%E7%B3%BB%E3%81%AE/%E7%AD%8B%E8%82%89%E3%81%A8%E8%85%B1/
[13] https://www.physio-pedia.com/Anterior_Shoulder_Instability
[14] https://www.marugameseikei.com/speciality/%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%AD%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%BB%E7%AD%8B%E8%86%9C%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%BB%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9/
[15] https://www.hopkinsmedicine.org/health/conditions-and-diseases/superior-and-anteriorsuperior-migration-of-the-shoulder
[16] https://coubic.com/gotenyama-seikei/blogs/890213
[17] https://www.advancedorthopedic.net/Injuries-Conditions/Shoulder/Shoulder-Issues/Shoulder-Dislocations/a~4156/article.html
[18] https://www.stroke-lab.com/speciality/34420
[19] https://note.com/tomosan_bbptnote/n/nfabf109abaec
[20] https://coubic.com/gotenyama-seikei/blogs/890213
[21] https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/46S1/0/46S1_H2-46_2/_article/-char/ja/
[22] http://hanamizuki-yukigaya.jp/16487241590197
[23] https://www.jstage.jst.go.jp/article/mpta/25/1/25_3/_pdf/-char/ja
[24] https://www.jstage.jst.go.jp/article/srpt/14/1/14_14_57/_pdf/-char/ja
[25] https://cir.nii.ac.jp/crid/1390282680547952768
[26] https://rehatora.net/%E8%82%A9%E9%96%A2%E7%AF%80%E5%89%8D%E6%96%B9%E3%81%AE%E7%97%9B%E3%81%BF%E3%81%AE%E5%8E%9F%E5%9B%A0%E3%81%A8%E3%83%AA%E3%83%8F%E3%83%93%E3%83%AA%E6%B2%BB%E7%99%82/
[27] https://www.stroke-lab.com/speciality/33479
[28] https://1post.jp/7148
[29] https://note.com/tomosan_bbptnote/n/na59614ba22b4
[30] https://www.facebook.com/photo.php?fbid=298431373649834&id=140890809403892&set=a.219284601564512
[31] https://ameblo.jp/ss07230813/entry-12181680990.html
[32] https://www.jstage.jst.go.jp/article/jkpt/5/0/5_0_31/_pdf
[33] https://xpert.link/column/363/
[34] https://kikukawa-seikotsuin.com/blog/katanohikkakari-arimasenka/
[35] https://www.stroke-lab.com/speciality/34420
[36] https://rehademy.com/column/detail/272